共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

統合失調症の発症・病態仮説に共通するトリプトファン代謝に注目した予防・治療戦略

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
20K07931
体系的課題番号
JP20K07931
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

統合失調症の死後脳において、キヌレニンを代謝する酵素であるキヌレニン-3-モノオキシゲナーゼ(KMO)活性の低下が認められている。本研究では、フェンサイクリジン(PCP)により惹起される精神行動障害へのKMOの関与について検討を行った。野生型マウスにNMDA受容体アンタゴニストであるPCPを急性投与すると、情報処理機能を指標とするプレパルス・インヒビション(PPI)障害が惹起され、統合失調症モデルマウスとしての中間表現型が認められた。キヌレニン-3-モノオキシゲナーゼ(KMO)遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスにおいて無作用量のPCPを急性投与してもPPI障害が認められた。KMO遺伝子欠損マウスの海馬においてキヌレン酸(KA: NMDA受容体アンタゴニスト)の増加及び3-ヒドロキシキヌレニン(3-HK)の減少が認められた。C57BL/6NマウスにKMO阻害剤及びKAを併用投与すると、無作用量のPCP でもPPI障害が認められた。一方で、キヌレニン(KYN)、3-HK、キノリン酸(QA: NMDA受容体アゴニスト)及びキサンツレン酸 (XA: 代謝型グルタミン酸受容体アロステリックアゴニスト)を投与するとPCPによるPPI障害は認められなくなった。KMO遺伝子欠損マウスでは発症脆弱化・病態の悪化に関与するKAが増加、それらの改善に関与するXAおよびQAの上流に位置する3-HKが減少により、PCPによるPPI障害に対して脆弱性が認められたことが示唆された。以上のことから、本研究においてKMO遺伝子欠損マウスはNMDA受容体及びmGlu受容体に作用する代謝物量の変化 [KAの増加と3-HK (QA及びXA)の減少] が認められ、KMO活性の低下によるTRP代謝基軸の変容は統合失調症の病態の重症度に関与することが示唆された。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K07931
ID情報
  • 課題番号 : 20K07931
  • 体系的課題番号 : JP20K07931