2001年 - 2002年
セレン活性分子種変換のダイナミズム:含セレンタンパク質合成機構の構造生物学的解析
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
セレノシステインリアーゼ(SCL)は、セレノシステインに特異的に作用しアラニンとセレンを生成する反応を触媒する酵素である。本酵素は、セレノリン酸シンテターゼの基質セレニドを供与する活性を持つことから、セレノシステイン残基を有するセレンタンパク質生合成の初発段階に関与する可能性が考えられている。一方、大腸菌には、SCLと類似した酵素であるシステインデスルフラーゼ(CSD)が存在する。CSDはSCLと異なりシステインとセレノシステインの両方を基質とするが、これまでの解析により、基質システインの分解に必要とされる保存されたシステイン残基は、セレノシステインの分解には必須では無いことが示されている。これと同様な反応機構でSCLの反応が進行するならば、SCLにはシステイン残基による触媒作用は不用と推測される。マウスSCLにはシステイン残基が8つ存在する。これら8つのシステイン残基の内、Cys304、Cys346、Cys364、Cys375の4つはヒトSCLにも保存されている。部位特異的変異法によりC101S、C129S、C177S、C304S、C346S、C364S、C375S、C390Sの8種の変異型SCLを作製した。各変異型酵素遺伝子の発現をSDS-PAGEによって確認し、粗酵素液のSCL活性を測定した。その結果、C375Sはほぼ完全にセレノシステイン分解活性を失っていた。また、C364S、C177S、C101SのSCL活性も著しく減少していた。特に活性に与える影響の大きかったCys375については、C375A変異型酵素も作製した。C375SをSuper-QとButyl-TOYOPEARLを用いて精製し、また、C375AをQ-SepharoseとButyl-TOYOPEARLにより精製し、精製酵素のSCL活性を測定した。C375S、C375Aは共に、wild-typeと比較してSCL活性が約1/2000に減少した。以上より、Cys375は、SCL活性に必要であることが明らかとなった。よって、SCLの触媒反応機構は、大腸菌のCSDが触媒するセレノシステイン分解反応とは異なっているものと考えられた。
- ID情報
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- 課題番号 : 13480192
- 体系的課題番号 : JP13480192