2019年4月10日
放射線健康リスク科学教育の医学教育における潮流と本学での取り組み
福島医学雑誌
- 巻
- 69
- 号
- 1
- 開始ページ
- 85
- 終了ページ
- 94
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(大学,研究機関等紀要)
- 出版者・発行元
- 福島医学会
2011年の東日本大震災と原発事故を受け、原子力災害を含む複合災害の急性期から回復期における医療・保健分野の人材の育成が急務となった。福島県立医科大学では、震災以降、医学部の講義・実習などの中に放射線健康リスク科学教育を全国に先駆け導入し、大学院教育においても災害・被ばく医療科学共同専攻(修士課程)を開設するなど、本分野の先進的な取り組みを進めてきた。また原子力規制庁の主導する原子力災害拠点病院向けの中核人材育成講習会をはじめ、大学附属病院のスタッフ、本学の看護学部生、他大学の学生、他の医療・保健関係者向けにも、放射線災害医療セミナーを行っている。日本国内においては、2014年9月に、日本学術会議より放射線健康リスク科学分野の医学教育の充実に向けた提言がなされた。これを受け文部科学省は、2017年3月に発表された平成28年度医学教育モデル・コア・カリキュラム(以下コアカリキュラム)の改訂において、放射線リスクコミュニケーションと放射線災害医療を、新たな医学部コアカリキュラムの一つに取り入れた。本稿では、医学教育の流れの中で、放射線健康リスク科学教育がどのように位置づけられてきたかを見て、その後、震災や原発事故を契機にどのような教育上の潮流が生まれたかを概観する。そして、震災後福島県立医科大学で進めている医学部教育における放射線健康リスク科学を、3年生の放射線生命医療学とチュートリアル教育、5年生のBSL実習を中心に紹介する。最後に国際的な災害医療教育と比較し、現在取り組んでいる本学の放射線健康リスク科学教育の意義とその本質について考察する。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0016-2582
- eISSN : 2436-7826
- 医中誌Web ID : 2019308455