MISC

2017年

災害復興計画における将来人口フレームに関する考察

日本地理学会発表要旨集
  • 丸山 洋平
  • ,
  • 吉次 翼
  • ,
  • 大江 守之

2017
0
開始ページ
100185
終了ページ
100185
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14866/ajg.2017s.0_100185
出版者・発行元
公益社団法人 日本地理学会

1.問題意識と目的 近年、日本では人口減少・少子高齢化が地域差を伴って進行しており、また、自然災害の激甚化・広域化・長期化も進んでいる。大規模自然災害の被災地では、例えば東日本大震災における原発避難区域の設定や集団移転、三宅島噴火における全島避難など、住民が居住地の変更を強いられるケースや、公共インフラ等の被害により商業施設等の生活の場が早期に復旧せず、結果として住民の流出に至るケースも少なくなく、人口減少・少子高齢化をさらに加速させる。そのため、被災地の復興を効率的・効果的に進めるには、過去の地域人口動態の特徴と被災による人口変動を考慮した将来推計人口を計画フレームとして織り込んだ災害復興計画の策定・実施が重要になる。こうした考えのもと、平成25年に制定された大規模災害復興法では、東日本大震災クラスの巨大災害が起こった場合、国・都道府県知事から被災自治体に対して復興計画の前提となる将来人口の見通しや土地利用方針が示されることが定められた。 復興計画における将来人口フレームは、どのように設定されるべきだろうか。上記法では国立社会保障・人口問題研究所の地域別将来推計人口の利用が推奨されているが、これは自然災害の影響を考慮したものではないため、被災後の将来人口フレームとして単純に引用することには疑問がある。また、復興事業を大規模に進めることが避難者の帰還や新規の定住を後押しする可能性もあり、被災後の人口流出を前提とした復興計画が一概に適切とは言い切れない。しかし、希望・願望に傾いて過度に大きな将来人口を設定すれば、復興事業の規模が過大となって将来世代に大きな負担を残し、かえって復興の妨げとなる恐れもある。 本研究は、こうした問題意識を踏まえ、東日本大震災の被災地を中心に過去の自然災害の復興計画における将来人口フレームの設定実態をレビューすること、被災後の人口変動およびそれと具体的な復興事業等の成果との関連性を分析することを通じて、災害復興計画における将来人口フレーム設定と活用のあり方を考察する。 2.分析視角 <u>1</u><u>)復興計画の期間(短期、中長期)</u> 北海道奥尻町や兵庫県神戸市等、過去に被災した自治体の人口は被災直後に大きく減少するが一時的であり、10~20年程度かけて被災前の将来推計人口の規模の収束していく。したがって、鉄道復旧や高規格道路整備といった中長期的な復興事業に関して、被災前の将来人口推計結果を計画フレームとして活用することには一定の合理性がある。一方で、集団移転や災害復興住宅整備といった短期的かつ精緻な需要把握が求められる復興事業に関しては、被災地に住民票を残したまま避難・転居している人びとの存在や、被災者支援施策の創設・拡充や周辺環境の変化等によって断続的に変化しうる住民意向等を踏まえた将来人口フレームの設定方策等を検討していく必要がある。ただ、復興事業の早期開始が避難者の帰還を促す効果を持つことから、機動性・即時性のある計画策定も求められる。 <u>2</u><u>)被災規模(小規模、大規模・広域)</u> 局地的な被災であれば、既存の基礎自治体単位での将来人口フレームの活用に合理性がある。しかし、津波・原子力災害をはじめとした大規模広域災害の場合は、基礎自治体の枠組みを超えた生活空間分布の変化が引き起こされるとともに、人口減少・少子高齢化の進行に対応してインフラ・公共公益施設等の集約再編が圏域レベルで行われる可能性もあることから、より広域な圏域単位での将来人口フレームの設定および各基礎自治体の復興計画への反映方策等を検討していく必要がある。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14866/ajg.2017s.0_100185
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005635782
ID情報
  • DOI : 10.14866/ajg.2017s.0_100185
  • CiNii Articles ID : 130005635782
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000350653940

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