基本情報

所属
情報・システム研究機構 国立極地研究所 先端研究推進系 気水圏研究グループ/アイスコア研究センター 教授 (気水圏研究グループ長)
総合研究大学院大学 複合科学研究科 教授
学位
博士(工学)(1992年9月 北海道大学 1992年 「マイクロ波領域における氷結晶の誘電特性の測定と極域雪氷圏における電波リモートセンシングへの応用」電子版公開 http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/51167)

研究者番号
30250476
ORCID ID
 https://orcid.org/0000-0003-0127-0777
J-GLOBAL ID
201201017718089372
Researcher ID
A-7884-2016
researchmap会員ID
B000225291

外部リンク

研究課題と活動概要

◆専門分野:
アイスコアの解析を軸とした気候変動と環境動態の研究、氷と雪の物理学、レーダリモートセンシング、応用物理学、極域雪氷圏の研究

地球環境変動や、その変動のなかでの極域雪氷圏の挙動や役割を研究しています。南極大陸などの極域雪氷圏にかかる観測、リモートセンシング、実験室系での雪氷試料分析や実験、それに、固体結晶としての氷の物理化学的な諸性質の解明とあわせての理解を追求しています。大陸氷床スケールの巨大氷体の振る舞い、氷期 - 間氷期の時間軸のなかでのその挙動や物質輸送、固体結晶としての氷の物理化学的な諸性質と、そのマクロとミクロをむすぶ諸現象の解明に取り組んでいます。そして、そうした知識を論文や解説書やプレスリリースや講演・講義(下記に一覧あり)で発信し普及させることにつとめています。

◆研究関連の主な活動項目:
・アイスコアの採取と解析を基礎として、地球上に起こった環境変動の歴史を現在から約100万年前までの時間スケールで理解するための多分野連携研究をすすめています。
・地球温暖化と海面上昇、海面上昇を引き起こす極地氷床の流出現象の理解を目指しています。
・アイスコア解析にかかる各種の技術開発研究と応用をすすめています。
・極域の雪が生成し、その後に変態・変形して氷にかわっていくプロセスの研究をすすめています。主な手法として、マイクロ波・ミリ波手法を用いて、雪・氷・フィルンの誘電率テンソルの計測を用いています。この技術は極地雪氷を理解するキーテクノロジーになっています。
・氷結晶の高周波での誘電異方性の明確化や同定、複素誘電率虚数部の同定の研究をすすめています。
・VHF帯やUHF帯のレーダやアイスコア解析の手法を用いて氷床内部の動力学的な構造の解明を目指した研究をすすめています。
・南極氷床の特に内陸部を探査し、現地で起こっている環境の変動(地球温暖化とそれにともなう変動の方向性)を捉える観測的研究をおこなっています。また、南極の基盤地形図の国際編纂にデータを供給してきました(特にドームふじ地域およびドームA地域)。
・アイスコアの全国共同利用にかかる組織化作業のメンバーの一人として活動しています。国立極地研究所のアイスコアをはじめとした低温資試料の管理、低温室設備の利用管理を担当しています。低温室設備が、研究や教育に効果的に活用されるようにはかっています。
・アイスコアの年代を決定する研究をおこなっています。
・南極の「ドームふじ」近傍にあるであろう地球最古の氷(Oldest Ice)の採取と分析の実現を国際的な取り組みとしてすすめていきます。Oldest Iceは、過去100万年間にわたって地球の気候に起こってきた氷期・間氷期サイクル周期の変遷(4万年周期→10万年周期)を理解し地球気候システムを理解するうえでの「実データ」としてのカギとなります。


◆極域観測への参加
・第29次日本南極地域観測隊(1987.11-1989.3)あすか観測拠点越冬隊.隕石探査、および雪氷観測、掘削機試験のための越冬観測.
・第37次日本南極地域観測隊(1995.11-1997.3)ドームふじ観測拠点越冬隊.氷床深層コア掘削と雪氷調査を目的とした越冬観測.
・第47次日本南極地域観測隊(2005.10-2006.2)ドームふじ観測拠点夏隊.氷床深層コア掘削と雪氷調査を目的とした夏期間の観測.
・第49次日本南極地域観測隊(2007.10-2008.2)内陸観測夏隊.ドローニングモードランド地域の広域の雪氷調査(日本・スウェーデン共同トラバース)を目的とした夏期間の観測.
・第59次日本南極地域観測隊(2017.10-2018.2)内陸観測夏隊.ドームふじ地域の広域の氷の内部層構造や氷下環境や氷厚の調査を主目的とした夏期間の観測.
・第60次日本南極地域観測隊(2018.10-2019.1)内陸観測夏隊.ドームふじ地域の広域の氷の内部層構造や氷下環境や氷厚の調査を主目的とした夏期間の国際共同観測(日本、ノルウェー、米国).


委員歴

  18

主要な論文

  151

MISC

  68

書籍等出版物

  7

講演・口頭発表等

  252

共同研究・競争的資金等の研究課題

  28

社会貢献活動

  4

その他

  2
  • ◆東南極地域日本・スウェーデン共同トラバース、雪氷レーダ研究: 2007年10月末~2008年2月中旬の期間、日本南極地域観測隊の東南極地域南極トラバース「日本・スウェーデン共同トラバース」を実施した。この内陸調査自体は、南極観測50年を記念する国際連携事業(IPY)をなす研究プロジェクトの一つとして、国立極地研のなかでここまで企画・立案や国際調整を推進してきた。現地調査は完了し、データ分析とサンプル分析のとりまとめを続けている。既に多くの論文の公開をすすめたが、10年を経てもなお、引き出すべきデータの価値がまだまだある。継続して、目的とする科学的成果としてまとめあげることに努力をする。 ◆極地氷床と気候変動: 氷床をはじめとする雪や氷に対するレーダ研究についても、これまでの研究やデータの蓄積をベースに国際連携・人材育成も含めた研究の展開をはかりたい。データが含有し、科学的に有意かつ未発展の事項を、重要と考えるものから順次論文化をしている。氷の厚さの計測、氷の内部の物理状態(流動・変形・変態)や基盤の状態の同定等、雪や氷に対しての知識、それに、レーダ計測のバックグラウンドの知識がなければ取り組めない課題について、積極的に推進をしていく。南極観測は、継続的監視はとても重要であるものの、参画する科学者が感じる科学的な魅力や期待感が非常に重要な要素になる。「継続的監視」のみでは、現場観測をコミュニティで担う体制を維持できない。極地研究関係者は、常に魅力的な大口の「新たな切り口」を提示・提案し、科学者コミュニティが意欲を持って参画しつづける状況をつくっていく必要がある。IPYはそうしたひとつのキャンペーンであった。氷床境界条件(フィルンプロセス、底部、棚氷等縁辺部、堆積、気象)が重要な鍵ではないか? それに、氷床が内部にもっている物理的・化学的性質も。良好な筋・切り口の研究があることで、その先の視界が大きく開けるときがある。そのわくわくを如何に発信できるか。 ◆将来の世代への継承: データや、資料・試料のアーカイブや継承体制についても目下の課題。次世代をになう研究者には、これまで蓄積してきた各種のノウハウを是非伝えていきたい。自ら考え、行動し、研究展開と論文出版体制をつくることのできる若手の育成が課題。 今も、これからも。 ◆国立極地研究所という全国共同利用機関法人のなかの一研究所で研究する立場上、共同研究推進の担い手としての役割をはたす。各地の大学や研究機関との連携や交流を一層深め、コミュニティーとして力を発揮できる状態をつくっていく。
  • ◆氷床および氷床コア中の物理化学的プロセス研究の推進: 氷床深層コア試料をはじめとした極地氷床から採取した各種雪氷試料とし、これらにかかわる物理化学的プロセスの解明研究を実施している。これにより、氷床コアからひきだす古気候情報の価値を高め、気候変動プロセスの理解や将来の気候予測に関連し必要とされる情報を提出してゆく。特に、昨今取り組んでいるフィルン研究については、各国の雪氷物理研究者が興味を持って取り組んでいるテーマである。電磁波・光学的・X線手法等を特に活用した実験研究の成果を着実に発信していきたい。 ◆氷床深層コア試料にかかる古気候復元研究の推進: プロセス研究との両輪としておこなう研究は、氷床深層コア研究そのものである。南極頂部ドームふじから採取した3035m長の氷サンプルは、世界の氷床コア研究・古環境研究を代表する雪氷試料のひとつと呼んでも過言ではない。欧米勢との協力・競争・切磋琢磨のなかで研究をすすめている。氷床コアやその信号のなかに含まれる物理プロセスと、それに、物理・化学的性質として検知可能な地球の環境変動史の解明を、主要研究機関の大きな責務として果たしていかなければならないと考えている。 ◆研究技術革新の推進: 高度な計測技術が発展し、新たな研究の切り口が常に出現しつつある昨今、上記試料を対象に実施する各種実験研究には、先進の技術や研究の切り口の導入を常にはかりたい。氷床コア研究の分野に於いても、技術導入や他グループの革新に遅れずについていくことなしには世界的な先端水準を維持できないことを、これまでの研究や諸外国の研究者との研究上のかかわりで強く認識をしてきた。研究・教育のなかにおいて高度な技術的要素を導入し腰を据えて駆使し、研究結果に結びつけていきたい。電磁波や、光学的手法、それにX線手法等を特に活用し、氷床コア研究や雪氷研究の新たな地平の開拓につとめる。これまで既に手がけてきたマイクロ波誘電計測手法については特に応用を促進する。現在国立極地研究所の研究開発プロジェクトとして導入した自動ファブリックアナライザーについても、積極的に活用をはかっていくほか、新たな手法には積極的に取り組んでいく。