MISC

2015年

GPSを用いた漁業者の海上における行動の分析:―茨城県大洗町の船曳網漁家Yの事例―

日本地理学会発表要旨集
  • 本多 広樹
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  • 橋爪 孝介
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  • 坂本 優紀
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  • 麻生 紘平
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  • 小林 愛
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  • 馮 競舸

2015
0
開始ページ
100126
終了ページ
100126
DOI
10.14866/ajg.2015a.0_100126
出版者・発行元
公益社団法人 日本地理学会

1.序論<br> 漁業地理学では漁業空間を陸域と水域に分割し理解してきたが、陸域に比べ水域の研究は進んでいない。水域を分析対象とした先駆的な研究として、文化地理学的な視点から漁場利用を解明した田和(1997)や時間地理学の手法を用いて漁業者の海上での行動を解明した櫛谷(1985)および中村(2002)がと言え挙げられる。しかしこれら従来の研究では点あるいは面として漁場を把握しており、漁港から漁場に至るまでの航路や漁場内における行動は十分に解明されてこなかった。そこで本研究では、出港から帰港に至るまでの漁業者の海上での行動を明らかにすることを目的とする。<br><br> 2.方法<br> 2015年5月27日にシラスを中心とする船曳網漁を親子で営む大洗町の漁家Yの協力を得て、漁家Yの海上での行動を、調査者が持ち込んだGPSによる測位と観察により把握した。漁船には橋爪・坂本・馮が乗船し、操業に支障を来さぬよう、漁船の船首部分で調査を行った。GPS測位では出港から帰港までの航路をトラックとして取得するとともに、漁網の投入時と回収時にウェイポイントを取得した。測器にはGarmin社のeTrex10を使用した。観察では船上での漁業者の行動を分析し、フィールドノートに記録した。操業中である午前9時の水戸における天候は快晴、気温は22.9℃、東北東の風、風速5.0m/sであり、洋上に波はほとんどなかった。なお当日の漁況は不漁であった。<br><br> 3.結果 <br>以下では観察による結果を示し、GPSにより取得した漁船の航路および漁網の投入・回収地点は当日発表する。 午前4時25分に父の操船で発船し、4時31分に大洗港の港湾区域外へ到達した。港外でしばらく停泊し、近隣に停泊する漁船や知り合いの営む漁船に父が無線で挨拶を行った。4時54分に再び発船し、南方向へ向け、海岸線に沿って沖合2km付近を航行した。この間、息子は漁網などの漁具や漁獲物の鮮度を保つための氷の準備を行った。また甲板へ散水し、船上を清潔に保っていた。 父が魚群探知機を用いて魚群を探索し、漁網の投入地点を決定、警笛で息子に投網準備を指示した。5時20分に父の警笛の合図で息子が浮き球の付いた漁網の一端を投入することで投網を開始した。漁網は錘により海中へ沈み、漁船を円を描くように進め、魚群を取り囲んだ。最初に投入した浮き球まで漁船が到達すると、息子が浮き球を回収し、漁網が広がるまで5分程度漁船は待機した。なお漁網の両端が海中に投入されるまでに3分ほど要した。 漁網の回収は父と息子の2人で行った。漁獲物の入る袋網は二重構造になっており、混獲魚の入る袋網からは父が、シラスの入る袋網からは息子が回収した。混獲魚は樽へ、シラスは丸かごに入れ、販売できないサメなどは海へ返した。この作業が終了した後、次の漁場へ向かった。移動中は息子が漁獲物の鮮度処理、甲板の清掃、次の投網の準備などの作業を行った。この際、樽に入れた魚類は船の水槽へ、シラスは角型のかごへ移された。この作業が操業海域を変えながら、約4時間で合計1110回繰り返された。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14866/ajg.2015a.0_100126
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005490194
CiNii Resolver ID
http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000347128567