MISC

2019年

ドイツの初等・中等地理教育におけるコンピテンシーの特徴

日本地理学会発表要旨集
  • 阪上 弘彬

2019
0
記述言語
日本語
掲載種別
研究発表ペーパー・要旨(全国大会,その他学術会議)
出版者・発行元
公益社団法人 日本地理学会

2017・2018年告示の学習指導要領では「資質・能力」の形成が強く意識された.一方で,初等・中等教育を通じた教科の専門性を踏まえた資質・能力の在り方については現在も議論されている.本発表では,上記の議論のための基礎資料を提供するために,コンピテンシーに基づくカリキュラム改革に早くから取り組んできたドイツに着目し,教育スタンダードの検討から,初等・中等教育を通じてどのような地理的コンピテンシーの育成を目指しているのかを明らかにする.</p><p>2. ドイツ初等・中等地理学習に関する教育スタンダード</p><p> 初等の教育課程において地理は明確に位置付けられてはいない.事実教授(Sachunterricht)の中で「地理的視点」が設定され,そこで地理に関連した学習が展開している(阪上ほか 2019).『事実教授の展望枠組み(Perspektivrahmen Sachunterricht)』(以下,事実教授スタンダードとする)は事実教授学会(GDSU)によって作成され,現在は第2版(2013年)が公開されている.中等の地理は,独立科あるいは社会科のなかに位置づけられている.『ドイツ地理教育スタンダード(Bildungsstandards im Fach Geographie für den Mittleren Schulabschluss)』はドイツ地理学会(DGfG)によって提案され,現在は2017年公表の第9版が最新である.3. コンピテンシーの構造(枠組み)『事実教授スタンダード』では「視点にかかわるコンセプト・テーマ領域」と「視点を網目状に結びつけるテーマ領域・問題設定」,および「視点にかかわる思考・活動・行動方法」と「視点を横断する思考・活動・行動方法」という二面的開示モデルが採用されている(原田,2014).一方で『ドイツ地理教育スタンダード』では6つのコンピテンシーの領域(「教科専門」「空間定位」「認識獲得/方法」「コミュニケーション」「判断/評価」「行動」)が設定され,各領域は相互に結びつき,空間形成能力地理の目標を一体的構造的に関係づくるものとして捉えられている(服部,2007).4. 特徴</p><p> 地理学習では「『人間―環境』関係に気づき,分析し,評価する,そしてこれに基づく空間に関連した行動コンピテンシーを発展させ,実行に移すことができる」人物の育成を目指しているHemmer(2013: 99).そのなかで地理的コンピテンシーに関しては,初等・中等地理学習ともに①空間における人間と自然の関係,②地図の取扱いを含む空間定位に関するコンピテンシーの育成が意図されている.また初等段階では,とくに②に関する育成の重点が置かれていた.

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130007710912
ID情報
  • CiNii Articles ID : 130007710912
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000404492383

エクスポート
BibTeX RIS