共同研究・競争的資金等の研究課題

2009年4月 - 2011年3月

フェルミ多体系の量子相転移とBCS-BECクロスオーバー

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
09J00624
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
1,400,000円
(直接経費)
1,400,000円

Lee、Yangの量子クラスター展開法を用いて、BCS-BECクロスオーバーを解析した。BCS-BECクロスオーバーとは、引力相互作用する二成分冷却フェルミ気体が、粒子間相互作用を連続的に変えると、クーパー対を組むBCS状態から、分子ボソンのBEC(ボース・アインシュタイン凝縮)状態まで変化する現象である。得られた成果は、次の【1】~【4】である。【1】相転移点は、「フガシティー」と「熱的ド・ブロイ波長と散乱長の比」の二変数(z,λ/a)で決まる。Lee-Yangの方法を用いて、大分配関数を梯子型のグラフの無限和で近似する。このとき、正行列に関するペロン・フロベニウスの定理を用いて、超流動転移点における上記の二変数の関係を求める方法を発見した。この方法を用いれば、散乱長に依らず梯子近似の範囲内での、精確な数値解が計算できる。BEC極限で、自由ボース気体の転移点を正しく再現することを、解析的に確かめた。また、ユニタリティ極限におけるフガシティを数値計算し、実験やモンテカルロ計算による先行研究と比較した。【2】先行研究において、Yang-Huangの擬ポテンシャルの下での「厳密なバイナリ核」を用いて、BCS転移温度が導出されている。しかし、物理的な正当性や繰り込みが必要な理由が明らかではない。本研究では、物理的な意味を持った仮定から、BCS転移温度が得られることを示した。【3】BEC極限における3次と4次のビリアル係数の計算に必要な項の一部を解析的に計算した。【4】Lee-Yangのグラフ展開の物理的意味を考察することで、BEC極限の考察には基本グラフを用いた梯子近似で十分だが、BCS極限の考察には縮約グラフを用いた梯子近似が必要なこと、ユニタリティ極限の考察には縮約グラフを用いた梯子近似では不十分なこと、を明らかにした。

ID情報
  • 課題番号 : 09J00624