共同研究・競争的資金等の研究課題

2015年4月 - 2018年3月

カイコにおける性決定カスケードと遺伝子量補正および組換え抑制機構のクロストーク

日本学術振興会  科学研究費 基盤研究(A)  

担当区分
研究代表者
資金種別
競争的資金

カイコではW染色体の存在のみで雌性が決定する。私たちはW染色体の転写物に由来する小分子RNA (Fem piRNA)が、Z染色体上の雄化遺伝子MascのmRNAを切断することが、カイコの性決定の最上位機構であることを明らかにし、Mascタンパク質が雄化と同時に遺伝子量補正を支配することを示してきた。本研究は、遺伝子量補正におけるMascタンパク質の機構を調べるとともに、カイコが雌において組換えを抑制する仕組みを明らかにし、それらと性決定機構のクロストークを解明しようとしている。
1. Mascタンパク質が結合するゲノム配列およびRNAの同定:前年度、BmN4細胞を用いてMascのChIP-seqを行ったので、今年度、それらのデータを用いたインフォマティクス解析を行った。今のところ、Mascに結合する特異的なDNA領域やそれらのZ染色体への偏りは確認されない。一方、Mascの一部を変異させたタンパク質をBmN4細胞に発現し、核移行シグナルを同定した。その結果、核移行と性決定とは無関係であることが判明した。
2.Masc ノックアウト(KO)カイコおよびBmAgo3 KOカイコの解析:前年度までにCRISPR-Cas9システムにより、Masc KOカイコを作出した。本年度、Masc KOカイコを観察した結果、雄のホモ個体は胚期に致死することが明らかになった。また、piRNAが結合するタンパク質であるBmAgo3に関しても、その遺伝子のKOカイコを作出している。BmAgo3 KOのホモ個体は幼虫期の発育が遅延するとともに、変態期の形態形成に異常が生じ、羽化できなかった。
3. Masc-R TGカイコを用いた組換え抑制機構の解明:他研究機関との共同研究によって、Fem piRNA抵抗性Masc (Masc-R)を過剰発現するTGカイコを作出している。この系統のメス個体は部分的にオス化することが確認されている。本年度、この系統を用いて交配実験を試みたところ、雌の減数分裂時に常染色体における組換えが起きていることを示唆する結果が得られた。

リンク情報
URL
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02482/