共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2022年3月

時間対称性がつなぐエントロピーとダイナミクスの階層

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(A)  基盤研究(A)

課題番号
17H01148
体系的課題番号
JP17H01148
配分額
(総額)
44,330,000円
(直接経費)
34,100,000円
(間接経費)
10,230,000円

2018年度では、量子多体系において熱力学状態空間に経路積分を定式化し、その有効作用を導出する理論を完成させた。論文発表当初の形式では、エネルギーシェルのエネルギー固有状態をランダム位相で重ね合わせた状態によって過剰完全系を構築していたが、実際の計算には適切ではないという問題があった。その方針を放棄し、エネルギーシェルへの射影を用いて完全系にもとづく形式化を考えた。ここまでは2017年度で得られていたが、2018年度では、実際にこの方針を用いた計算を行い、熱力学に固有な性質を明示的に仮定することにより、論旨を明晰にし、矛盾なく「熱力学状態空間上の有効作用」を導出した。その結果、この熱力学的解析力学に相当する形式が量子力学にもとづいて得られたことになり、その解析力学の対称性を議論することができるようになった。そして、断熱準静的過程におけるエントロピー保存則が、時間に関する非一様並進の結果であることが示された。この結果は、Phys. Rev. で出版された。
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確率過程の定式化については、確率過程における経路積分表示において、断熱準静的過程での対称性を明らかにした。現在、論点をつめながら論文作成中である。ただし、この対称性と時間に関する非一様変換に対する対称性の関係は明示的でなく、完全な解答には至っていない。対称性を通してミクロとマクロの関係を明らかにするのが本研究課題の趣旨なので、ここからが問題の核心部分かもしれない
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エントロピーと量子性が関わる現象については、「量子力学系における古典カオス」の創発現象を取り上げた。巨視的に観測されるデータは「古典カオス」だが、それが純粋な量子力学で記述されるような系があるなら、古典カオスを特徴づける「エントロピー」が量子力学の言葉で書かれるはずである。このモデルを具体的に提示するところまではできた。現在、両者の関係を明らかにしようとしている。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-17H01148
ID情報
  • 課題番号 : 17H01148
  • 体系的課題番号 : JP17H01148

この研究課題の成果一覧

論文

  32

講演・口頭発表等

  6