論文

2017年1月

気候変動が我が国の水文循環に及ぼす影響の不確実性評価

水文・水資源学会研究発表会要旨集
  • 正木 隆大
  • ,
  • 田中 賢治
  • ,
  • 田中 茂信

30
開始ページ
11
終了ページ
11
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
DOI
10.11520/jshwr.30.0_11
出版者・発行元
水文・水資源学会

本研究では,気候変動リスク情報創生プログラムでデータ提供されている気候モデルである,解像度20kmのMRI-AGCM3.2Sの情報を用い,陸面過程モデルSiBUCに入力し,複数の未来のシナリオについて,気候変化がもたらす陸域水文諸量の変化の不確実性を評価した.陸面過程と河川流下過程の要素をもつ分布型水文モデルにより陸域水循環解析を行った.陸面過程にはSiBUCを用い鉛直方向の水収支を求め,河川流下過程Hydro-BEAMにより空間的・時間的変動を追跡した.ここでSiBUCの出力である表層流出と基底流出を引き継ぐことで結合し,Hydro-BEAMにおいてkinematic wave式を用いた河川水量追跡を行った.解析期間は現在気候を1979年~2003年,将来気候を2075年~2099年とし対象領域は日本全域とした.現在気候は1種類,将来気候は4種類用いた.また河川流量解析では3000km2以上の集水面積を持つ18水系および筑後川水系の25年平均月流量を比較した.SiBUCの結果から降雨量については,北日本や近畿と中国地方の日本海側,九州の西側はどの将来シナリオでも,降雨量が増加していることを示したが,逆に関東以西の太平洋側では,減少傾向にあることを示した.関東以西の内陸部では,同じ地域内でもばらつきがあり,増加か減少するかは,シナリオ間で異なることがわかり,増減についての不確実性が大きかった.流量については東日本から北日本にかけての川は12月から4月において現在気候に比べて将来気候は流量の季節変化が小さくなった.この変化は,雪による影響である.現在気候では,冬の間に降り積もった雪が雪解け水として,4月前後に一気に川に流れているためだが,将来気候では積もることなく解ける雪が増加したためである.北海道では将来において気温が上昇しても雪が一気に解けるほどの気温にならないために,冬から春にかけての季節変化の変化が他の雪国の川に比べて小さい.河川流量季節性の現在と将来の変化度合いを,Nash係数を用いて検出した.現在気候で降雪量が多い地域では,変化が大きいことを示しており,一方北海道の標高の高い地域や,関東の利根川流域周辺,九州地方は変化が小さいことを示した.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11520/jshwr.30.0_11
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130006236345
ID情報
  • DOI : 10.11520/jshwr.30.0_11
  • CiNii Articles ID : 130006236345

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