共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

交渉ゲームにおける提案過程の内生化及び提案頻度が合意分配に与える影響の分析

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
18J20162
体系的課題番号
JP18J20162
配分額
(総額)
1,300,000円
(直接経費)
1,300,000円
(間接経費)
0円

非協力ゲーム理論で交渉の分析を行う際には、利益の分配案の提案を各個人が交互に行うモデルが用いられることが多い。このモデルの特徴の一つとして、一回の提案機会(1期間)で提案を行うことができる個人は1人と定められていることがあげられる。このモデルでは均衡の結果として各個人が利益を半分ずつに分けることが知られているが、これは各個人の提案機会が等しいことに起因していることを私は以前の研究で示した。
しかしながら、一回の提案機会(1期間)で二人が同時に提案できるモデル(同時提案モデル)を考えたときは、各個人の提案機会が等しくとも、均衡において利益を半分に分けるとは限らない。従来の同時提案モデルでは多くの利益分配の方法が均衡として現れることが知られている。したがって、提案頻度が合意分配に与える影響の分析は困難である。そこで今回の研究では多様な均衡があらわれない同時提案モデルを構築し、そのモデルで提案頻度が合意分配に与える影響分析した。
今回の研究ではモデルの構築にあたって、仲裁者という存在を新たに導入した。仲裁者は各個人が同時に提案した分配案をもとに、交渉における折衷案を提案する役割を担う。このとき、仲裁者は各個人の提案を踏まえた上で折衷案を提案しているため、その意味で仲裁者の提案は内生的である。この仲裁者を同時提案交渉モデルに導入し、次の結果を得た。
仲裁者が各個人に対して公平なとき、均衡が唯一つ存在し、その均衡で公平な利益分配が達成されることを示した。したがって、公平な仲裁者が導入されると、同時提案モデルにおいても、各個人の提案機会が等しいときに均衡で利益が半分に分けられることを示した。一方で、仲裁者がどちらか一方の個人を好むバイアスを持っているときは、仲裁者の折衷案が均衡に影響を及ぼすため、仲裁者に好まれる個人にとって有利な利益分配が均衡で達成される可能性があることを示した。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18J20162
ID情報
  • 課題番号 : 18J20162
  • 体系的課題番号 : JP18J20162