共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

行動中マウスの膜電位イメージングによる能動的嗅覚受容機構の解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
18J00899
体系的課題番号
JP18J00899
配分額
(総額)
4,030,000円
(直接経費)
3,100,000円
(間接経費)
930,000円

今までは、匂い物質が嗅覚受容体に結合し、嗅神経細胞を「活性化」させると考えられてきたが、実際には匂い物質が多くの嗅神経細胞の活動を「抑制化」することが、本研究から明らかになった。報告者は、この抑制性応答が、定常状態における活性(基礎活性)の高い嗅覚受容体において特異的に生じている可能性を考えた。そしてin vitroルシフェラーゼレポーターアッセイにより、マウス嗅上皮からクローニングされた合計176種類の嗅覚受容体のうち、特に基礎活性が特に高かった17種類の嗅覚受容体を選出した。その後、選出された嗅覚受容体に対して、9種類の匂い刺激を行い、Olfr644とOlfr160が、特定の匂い物質に対して抑制性の応答を示すことが明らかになった。以上の結果から、嗅神経細胞における抑制化応答が、匂い物質-嗅覚受容体の逆作動薬効果によって引き起こされていることが示唆された。
次に報告者は、嗅神経細胞における抑制性応答の機能的な役割について検証を行った。自然界において我々が認知する匂いは、様々な匂い物質からなる混合臭である。従来、嗅神経細胞の混合臭に対する応答は、各匂い成分に対する活性化応答の単純な総和になると考えられてきた。ところが抑制性応答が嗅神経細胞でみられることから、実際は多くの嗅神経細胞の活動が、異なる匂い物質により拮抗的に阻害されているのではと考えた。混合臭に対する嗅神経細胞の活動を二光子カルシウムイメージングにより計測したところ、予想通り匂い成分が、他種類の匂い成分に対する応答を阻害することが明らかになった。ところが予想外なことに、匂い物質が他の匂い物質に対する嗅神経細胞の応答を増強することも明らかになった。以上の結果は、匂い物質が逆作動薬として受容体の基礎活性を抑制することや、拮抗薬/アロステリック増強薬として、他の匂い物質に対する受容体の活性にも作用することを示唆している。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18J00899
ID情報
  • 課題番号 : 18J00899
  • 体系的課題番号 : JP18J00899