2020年4月 - 2023年3月
海底熱水鉱床開発における廃鉱石の有害金属浸出を抑制する新規処理プロセスの検討
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 若手研究
海底から回収された鉱石のうち,低品位の鉱石は尾鉱として処理されることになる。陸上鉱山開発で発生する尾鉱は鉱山近隣の尾鉱ダムや堆積場に保管されることが多い。海底熱水鉱床開発の場合,回収後の鉱石を陸上に輸送し選鉱操作に供することになっているが,それに伴って発生する尾鉱の具体的な処理方法については依然決まっていない。尾鉱処理プロセスを構築するうえで,海底熱水鉱石の重金属溶出ポテンシャルは基礎情報として重要となる。昨年度までは熱水鉱石の浸出液の化学組成の特徴や,浸出自体を抑制する物理化学的処理方法について検討した。本年度は,熱水鉱石起源の金属含有廃水が発生した場合を想定し,特に陸上鉱山で発生する酸性坑廃水の処理方法を熱水鉱床開発における廃液処理に利用可能か検討するために,酸性坑廃水と熱水鉱石からの溶出化学成分を比較した。熱水鉱石の溶出成分と国内の陸上鉱山の坑廃水成分の主成分解析により,その化学的特徴を整理した結果,陸上鉱山廃水はFe,Alが多く,熱水鉱石の溶出成分はZn,Pb,Asが特徴的であることがわかった。陸上鉱山の酸性坑廃水でもZnやPbが含まれる場合があるが,陸上鉱山の廃水中に含まれるFeやAlを水酸化物に変化させ,ZnやPbがその水酸化物の表面に錯体を形成することで効果的に除去される。しかし、FeやAlの少ない熱水鉱石溶出水は,既に実操業化されている陸上鉱山廃水の処理技術をそのまま適用することが困難であることが明らかとなり、海底熱水鉱床向けの廃水処理技術の開発が必要であることが示された。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K19991
- 体系的課題番号 : JP20K19991
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論文
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Applied Geochemistry 129 104963 2021年6月 査読有り筆頭著者責任著者