共同研究・競争的資金等の研究課題

2009年 - 2010年

計算機実験とインタビュー調査によるサーキットブレーカーの制度的分析と設計

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
09J10389
体系的課題番号
JP09J10389
配分額
(総額)
1,400,000円
(直接経費)
1,400,000円

本研究は,株価暴落時の取引参加者のパニック的動向を抑制するためのサーキットブレーカー(以下,CB)制度がどのような条件の下で有効に働き,また逆に市場を不安定化させるのかを定性・定量の両面から明らかにするものである.そのための方法として,マクロとミクロとCB制度の三者が連結された市場モデルを構築して人工市場実験を行い,イタリア証券取引所の制度設計担当者へのインタビュー調査を行った.イタリア証券取引所ではCBを裁量的に運用しており,効果的なCB制度の設計において,シミュレーションによってルールに準拠したCBとの比較を行う要素であると考えられる.事実,リーマンショック以後,市場全体の取引を停止させる形式になりつつあった世界のCB制度が,2010年より個別銘柄のみを停止させる欧州型のCB制度に移行しつつあり,全体の取引を停止させない方法は一定の評価を得つつある.しかしながら,市場で取り扱っている商品のどの範囲までCBを適用するかについては,学術的な裏付けが乏しい状態であるので,有効性に関しては本研究における課題のひとつになり得るという着想を得ることができた.シミュレーション,インタビュー調査,および人々の価値意識を問うアンケート調査から,株式市場における制度設計のためには,次に示す3つの時空間スケールを考慮した上での制度設計が必要であると結論付ける.1.「制度効果」(短期的・局所的)2.「制度進化」(中期的,中間的)3.「価値意識」(長期的・広範囲).そのためには共時的なミクロ・マクロ・制度の3者によるループの枠組みに基づいた分析と通時的な複製子・相互作用子よる進化的枠組みでの分析が有効である.提案した市場システムモデルの妥当性を確かめたことにより,社会システム全体の永続性に寄与する制度としてCB制度のあり方を明らかにした.

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-09J10389
ID情報
  • 課題番号 : 09J10389
  • 体系的課題番号 : JP09J10389