共同研究・競争的資金等の研究課題

1996年 - 1997年

災害後の罪悪感経験とストレス状態の健康心理学的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
08610154
体系的課題番号
JP08610154
配分額
(総額)
2,000,000円
(直接経費)
2,000,000円

阪神大震災は、地震の規模だけでなく、多くの人たちを深刻な事件の当事者とした、大規模な都市型の災害であったことが特徴であった。ここでは、親しい者との別離や、親しんでいたものの喪失、自分自身の怪我や恐怖体験によって起こる社会的感情のうち、罪悪感に注目して、それが、ストレス状態とどのように関連しているのかを分析し、身体的精神的な健康状態を向上させ、維持するにはどのようにすればよいのかを検討した。研究は、小中学生のストレスの実態調査と健康教育活動という部分と、主に、成人を対象として、罪悪感に的を絞った調査研究の2つの部分からなった。小中学生の研究からは、PTSDおよびそれに準ずる反応傾向は、徐々に低下していることが示されたが、上記の喪失などの強い体験のある者では、不安、うつなどの反応はそれほど低下しておらず、罪悪感を示している者は、それほど多数ではなかったが、うつ状態との関係が深いと考えられた。成人では、罪悪感をもっている者ほど、深刻なストレス反応を示すことが明らかになり、また、この傾向は、喪失経験による「非現実的な罪悪感」の場合に顕著であった。罪悪感をともなう自伝的記憶を調査したところ、罪悪感の対象が、亡くなった人である場合には、罪悪感は無力感や絶望感に結びついており、家族などの場合には、より親密な社会的行動に結びつく傾向が見られた。これらのことから、対象とする事象によって、絶望感に結びつく非現実的な罪悪感と、より社会的な活動に結びつく罪悪感があり、身体的精神的な結果も異なることが明らかになった。これらの研究の一部は、国際健康心理学会議(1996)、WHOのワークショップ(1997)で報告した。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-08610154
ID情報
  • 課題番号 : 08610154
  • 体系的課題番号 : JP08610154