2015年
ルール表象はなぜ成立しにくいのか:—抽象的な概念名辞の「まくら言葉化」—
教育心理学研究
- ,
- 巻
- 63
- 号
- 3
- 開始ページ
- 267
- 終了ページ
- 278
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
- DOI
- 10.5926/jjep.63.267
- 出版者・発行元
- The Japanese Association of Educational Psychology
事例と共にルールを教授しても, 学習者がルール情報に着目せず, 事例情報のみからの帰納学習が行われる場合がある。このことを指摘した工藤(2013)は, その原因として事例情報が与えられたことによってルール表象の形成が不十分になることを示唆した。しかし, これまでなぜルール表象の形成が不十分になるかについては解明されていない。そこで本研究では, この点の解明を目指した。研究Iでは42名の大学生が, 研究IIでは87名の大学生が対象となった。「銅は電気を通す」という事例情報とともに「金属は電気を通す」というルール情報を与えて実験を行った結果, 以下の点が明らかとなった。「一般・個別」という知識の枠組みを不十分にしか持っていない学習者は, 与えられた2つの情報から「金属の銅は電気を通す」のようなイメージを形成していることが示唆された。すなわちルール情報中の「金属」という概念名辞が単に「銅」に係る修飾語としてイメージされてしまう。その結果, ルール表象が形成されないこと, また, さらにその結果, 当該のルールを後続の問題に対して適用できなくなることを示唆する結果を得た。本研究では概念名辞がその抽象性を失い単に事例の修飾語として位置づけられる現象を概念名辞の「まくら言葉化」と表現した。
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.5926/jjep.63.267
- ISSN : 0021-5015
- CiNii Articles ID : 130005108235
- identifiers.cinii_nr_id : 9000309999312
- SCOPUS ID : 84948985459