MISC

2012年12月

携帯心電計を用いた遠隔医療システムの確立

日本予防医学会雑誌
  • 笠原 真悟
  • ,
  • 佐野 俊二
  • ,
  • 荻野 景規
  • ,
  • 篠崎 洋二
  • ,
  • 晴田 和夫

7
3
開始ページ
87
終了ページ
93
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
(一社)日本予防医学会

近年のInformation and Communication Technology(ICT)において、我が国でのインターネットの人口普及率は70%を超え、世界的にみても、もっとも高品質で安価な水準にある通信ネットワークが広く一般に利用可能な状況が実現している。しかしながら、多くの地域においては医師不足が深刻化し、その結果として、患者、医療関係者との信頼関係が薄くなり、安心を得たいが為という理由で、救急病院へ駆け込むこととなり、結果として、医療財源の損失といった悪循環が生まれている。このような状況の中で、情報通信機器を用いた診療の確立、整備は急務となってきた。今回我々はHolter機能を持つインターネット対応型、多機能心電計であるCarPodを開発し、遠隔医療の確立を目指した。従来の心電計を用いた医療システムは医療データが膨大であり、遠隔医療システムを実現するには大掛かりなシステムが必要で、実現が困難であった。このCarPodを用いることにより、既存のインターネット回線で鮮明なリアルタイムモニタリングが可能となった。この機器は健常人でも手軽に装着可能でしかも、正確な診断ができるため多くの人(患者のみならず)に装着が可能である。更にこの機器は多機能であり、先にも述べた如く心電図、3軸加速度、体表面温度を長時間記録することでHolter心電図解析のみならず、生体情報を解析することにより、自律神経機能、活動運動解析、姿勢体位解析、睡眠時解析が多角的に評価可能となる。実際、我々は以下のような実例に実践している。1.家族性不整脈の症例に対する、遠隔運動負荷試験。2.先天性心疾患手術後の不整脈検査及び運動負荷試験としての応用。3.在宅医療と遠隔医療を同時に行い、見守りとしてのCarPodの応用。遠隔医療はようやくスタートラインに立ったばかりである。これに携わる医師をはじめとした医療関係者は、その利点、欠点を常に検証していかなくてはならない。対面診療という医療の基本を忠実に再現できるのであれば、遠隔医療、在宅医療はそれを除く患者の優良な選択肢となろう。それが過剰な医療費の削減や、予防医学への寄与につながれば大きな進歩につながる。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 1881-4271
  • 医中誌Web ID : 2014095861

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