2019年4月 - 2023年3月
高齢者の資産と世代間移転、引退決定の実証分析
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
2000年代中葉以降、それまで下落し続けてきた住宅価格がようやく上向くようになった(不動研住宅価格指数)。しかし、現在までに世界金融危機、大規模自然災害、新型コロナウィルスの感染拡大など幾度も住宅価格の下落場面にも見舞われ、下落が続いた時代に比べて事前に住宅価格の変動を予想することが難しくなっている。経済学では、予期せぬ資産価格の変動は、家計のライフプランに影響を与え、労働供給に変化を与えると考えられている。実際に、金融危機による予想外の住宅価格の下落が、高齢者の引退時期を遅らせたという研究が海外で次々に発表されはじめている(Disney et al.、2015;Farnham & Sevak、2016;Zhao、2018)。
日本では、住宅や土地の流動性の低さや高齢者の予備的動機や遺産動機を反映して、高齢者の住宅資産の取り崩しが見られないといわれる(村田、2015)。この場合、海外の結果とは異なり、予期せぬ住宅価格の下落は高齢者の労働時間に影響を与えないかもしれない。そこで、2006年から2017年(12回分)の『日本家計パネル調査』から高齢者(60歳以上)の個票データを抜き出し、所有している住宅価格の予想外の下落が、高齢者の労働時間に影響を与えたか否かを実証的に分析した。その結果、正規で働く男性と非正規で働く女性については統計的に有意に労働時間を増やす傾向にあることを確認できた。このことは、日本でも働く高齢者は住宅価格の変動を意識して生活を営んでいることを示唆する。
日本では、住宅や土地の流動性の低さや高齢者の予備的動機や遺産動機を反映して、高齢者の住宅資産の取り崩しが見られないといわれる(村田、2015)。この場合、海外の結果とは異なり、予期せぬ住宅価格の下落は高齢者の労働時間に影響を与えないかもしれない。そこで、2006年から2017年(12回分)の『日本家計パネル調査』から高齢者(60歳以上)の個票データを抜き出し、所有している住宅価格の予想外の下落が、高齢者の労働時間に影響を与えたか否かを実証的に分析した。その結果、正規で働く男性と非正規で働く女性については統計的に有意に労働時間を増やす傾向にあることを確認できた。このことは、日本でも働く高齢者は住宅価格の変動を意識して生活を営んでいることを示唆する。
- ID情報
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- 課題番号 : 19K01603
- 体系的課題番号 : JP19K01603
この研究課題の成果一覧
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MISC
2-
PDRC Keio Discussion Paper Series DP2023-001 2023年9月 責任著者
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Working Paper (321) 2019年2月 筆頭著者責任著者