共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

ヒトとマーモセットの成体海馬ニューロン新生の再検討

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
19K06930
体系的課題番号
JP19K06930
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

最近、ヒトの海馬の成体脳ニューロン新生レベルについて、極めて低いと結論する論文と、齧歯類と同程度に保たれていると結論する論文が出版され、ヒトの成体脳ニューロン新生レベルについてはまだ結論が出ていない。我々はこの点について、ヒトの海馬では、ニューロンの産生(増殖)レベルは非常に低いが、未熟ニューロンマーカーを発現する細胞は、齧歯類と同程度に保たれているとの結果を得た。この結果は、成人の海馬では、未熟ニューロン陽性細胞が、新生ニューロンを代表していない可能性を示唆している。
本研究では、この問題の解決を目指して、ヒトの海馬と構造が似ているマーモセットの海馬を用いて、未熟ニューロンマーカー発現細胞と新生ニューロンとの関係を調べた。マーモセットの海馬における未熟ニューロンマーカーPSA-NCAMの発現を調べたところ、顆粒細胞、顆粒細胞層下帯、歯状回門に分布が見られた。顆粒細胞層と顆粒細胞層下帯のPSA-NCAM+細胞は、もう1つの未熟ニューロンマーカーであるDCXや顆粒細胞マーカーのProx1に陽性であった。しかし、歯状回門に存在するPSA-NCAM+細胞は、DCXやProx1に陰性であった。また、マーモセットにBrdUを毎日1回10日間投与し、一ヶ月後に固定した海馬では、PSA-NCAM+/BrdU+新生未熟ニューロンが顆粒細胞層と顆粒細胞層下帯に見られたが、歯状回門には見られなかった。以上より、顆粒細胞層と顆粒細胞層下帯に存在するPSA-NCAM+細胞は、新生ニューロン(顆粒細胞)であるが、歯状回門に存在するPSA-NCAM+細胞は新生ニューロンではない可能性が示唆された。
この結果は、ヒトでも、歯状回門に見られるPSA-NCAM+細胞は、新生ニューロンではない可能性を示唆している。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K06930
ID情報
  • 課題番号 : 19K06930
  • 体系的課題番号 : JP19K06930