MISC

2019年7月

組織内酸素濃度変化を背景とした子宮内膜再生における微小環境変化(Role of Microenvironment and Transient Tissue Hypoxia in Regeneration of the Endometrium)

東京女子医科大学雑誌
  • 吉井 明日香
  • ,
  • 上田 祐司
  • ,
  • 北原 秀治

89
臨増1
開始ページ
E110
終了ページ
E117
記述言語
英語
掲載種別
出版者・発行元
東京女子医科大学学会

子宮内膜は月経や分娩といった内膜の脱落と再生を繰り返す驚異的再生能力を持ち、瘢痕を残さず再生を遂げるため、非瘢痕性組織の代表として注目されている。また、自動収縮能を持つ子宮平滑筋はその組織内酸素濃度の調整を自ら行い、子宮内の環境を絶えず変化させている。このような高い再生能力と特殊な再生環境を背景とした子宮内膜再生のメカニズムについては未だ不明な点が多く、再生不全に起因する癒着胎盤や着床不全などの産婦人科合併症も近年増加傾向であるにも関わらず、明確な予防法がないのも現状である。子宮内膜における組織内酸素濃度変化は、特に妊娠成立時の感染予防やトロホブラスト浸潤に関わることが既に知られており、血管新生や修復再生との関わりも論じられている。しかしながらin vivoでの研究報告が未だ少ない。疾患のメカニズム解明には基礎研究によるアプローチが重要であるが、本テーマの研究遂行には、ヒト検体の収集が困難であること、また、ヒトと同じ性周期を持ち、かつ組織学的にもヒトに類似するような実験動物が限られている点も、基礎研究が進まない理由と考えられる。われわれはこれまでに、子宮容積変化に着目した産褥マウスモデルおよび子宮復古不全マウスモデルを独自に作製し、子宮内膜修復に関する研究を行ってきた。その中で、子宮平滑筋収縮が誘引する組織内低酸素環境が子宮特有の再生環境背景として存在し、非瘢痕性修復を担うメディエーターが産生され、子宮内膜組織修復を促進させる事象について報告した。これら研究結果を含め、子宮内膜治癒および再生における微小環境について論じる。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 0040-9022
  • eISSN : 2432-6178
  • 医中誌Web ID : 2020123392

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