複合核における時間反転対称性破れの探索; 実験の計画と偏極原子核の中性子吸収断面積測定
日本物理学会第77回年次大会(2022年)
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- 開催年月日
- 2022年3月
- 記述言語
- 日本語
- 会議種別
- 開催地
- 岡山(online)
- 国・地域
- 日本
$^{139}$La, $^{131}$Xe, $^{117}$Snなどの原子核が中性子を吸収し、複合核共鳴を形成する過程において、核子間の基本的な相互作用である陽子-陽子相互作用と比べて最大で10$^{6}$倍大きな空間反転対称性の破れが観測されている。この現象は大きなs波共鳴状態のすそのにp波共鳴状態が存在している時に観測されており、パリティの異なった二つの状態が長時間混合することによって弱い相互作用由来の空間反転対称性の破れが大きく増幅されると考えられている。もし核子間相互作用に時間反転対称性の破れが存在していた場合、同様の増幅メカニズムによって大きく増幅されることが理論的に示唆されており、複合核共鳴状態を用いた未知の時間反転対称性の破れ探索実験(NOPTREX実験)が計画されている。そこで我々は複合核状態から放出される$\gamma$線の角度分布を測定することにより、$^{139}$Laでは時間反転対称性の破れの増幅率が$10^{6}$オーダーであることを確認した。これにより中性子電気双極子モーメント探索による現在の上限を超える感度で時間反転対称性の破れ探索を行うことができる可能性があることがわかった。時間反転対称性の破れの探索実験では、核偏極した原子核標的にそれと垂直に偏極した中性子ビームを入射し、吸収断面積のスピン非対称性を測定する。このために$^{139}$Laを標的核の第一候補として研究開発が始まっており、レーザー核偏極$^{3}$Heを用いた中性子偏極デバイス,動的核偏極法を用いた偏極$^{139}$La標的の開発が進行中である。また、静的偏極法でLa標的を偏極させ、原子核スピンと中性子スピンが平行な場合の中性子吸収断面積を測定する実験の準備がJ-PARCで進行中である。