2017年12月
MEDICAL TOPICS(第64回) 肥満における糖鎖の役割 糖転移酵素ST6GAL1は脂肪細胞の増殖を抑制する
THE LUNG-perspectives
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- 巻
- 25
- 号
- 4
- 開始ページ
- 411
- 終了ページ
- 415
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (株)メディカルレビュー社
肥満は、高血圧症や糖尿病、動脈硬化をはじめとする生活習慣病のリスク因子であり、肥満に伴って脂肪細胞が増殖・肥大化すると、代謝異常や生活習慣病の発症につながる。筆者らは肥満マウスの脂肪組織において、糖鎖構造の1つであるα2,6シアル酸を作る酵素ST6GAL1の遺伝子が肥満により著しく低下することを発見した。また、肥満によるST6GAL1の遺伝子発現の低下は、エピジェネティックなDNAメチル化の亢進により引き起こされていた。脂肪細胞のモデル細胞においてST6GAL1を過剰発現させると、脂肪細胞の増殖・分化、脂肪の蓄積量が減少した。さらに、ST6GAL1による脂肪の増殖抑制効果には、脂肪細胞における主要なα2,6シアル酸修飾タンパク質であるインテグリン-β1の機能変化が関わっていることがわかった。またST6GAL1欠損マウスに高脂肪食を与えると、通常マウスよりも体重や脂肪の増加量が大きくなった。以上の結果により、ST6GAL1が作るα2,6シアル酸をもった糖鎖は、インテグリン-β1などの働きを調節することで脂肪細胞の増殖を抑制し、肥満を抑える働きをもつことが明らかになった。今後、α2,6シアル酸を標的とした肥満や肥満関連疾患の新しい治療法の開発が期待できる。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0919-5742
- ISBN : 9784779219924
- 医中誌Web ID : 2018078569