共同研究・競争的資金等の研究課題

2002年 - 2004年

欧州における直接支払制度に関する比較制度分析:費用有効性と農地市場に及ぼす影響

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
02J07123
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
3,600,000円
(直接経費)
3,600,000円

今年度の研究実績は,以下の3つが挙げられる。
第1に,我が国の農業生産上の条件不利地域を定量的に把握すべく,1キロメッシュ(3次メッシュ)データ化を行なった(研究発表1)。これにより,国土のどこに条件の不利な農地が立地しているかを地図上で把握できるだけでなく,メッシュ単位で有する傾斜度等の特性との他の1キロメッシュデータとのクロス分析も可能になった。
第2に,我が国における農地保全と耕作放棄の問題を検討する分析ツールを作成するため,2000年農業センサスの集落データの1キロメッシュ化をはかった。農地の維持管理の観点からは,第1で述べた1キロメッシュデータだけでは不十分で,農業集落の実態を考慮に入れることが不可欠であるためである。これにより,属人データである集落データを,属地化することができ,これらの組み合わせによりさまざまな分析が可能になった。最大の研究成果は,大きく分けた場合に,農地維持管理について東日本・西日本の間の相違を明らかにした点である(研究発表2)。すなわち,北海道と東北の一部では,農業就業人口が減少しても経営耕地面積の減少率は農業就業人口の減少率を下回り,それゆえ農地流動化による農地集積(経営の規模拡大)が確認される。しかしながら,とりわけ中国・四国を中心とした西日本では,農業就業人口の減少に随伴して経営耕地面積が減少していることが分かる。これは,離農等による農業就業人口の減少によって放出された農地が,受け手が不在であるために耕作放棄されていることを意味している。
第3に,EU及びドイツ・バイエルン州における最新の農政改革を,直接支払制度を主たる分析対象として報告書にまとめた。もともとバイエルン州の直接支払制度は,国土の維持管理の観点から,とりわけ条件不利地域における農地を農地として保全し,それによって農耕景観を維持するために行なわれており,我が国における今後の農地保全を検討する上で示唆される点が少なくないと考えられる。

ID情報
  • 課題番号 : 02J07123