胸腺髄質上皮細胞は皮質上皮細胞分子β5tを一過性に発現する皮質髄質共通前駆細胞に由来する。私たちは、特定時期のβ5t発現前駆細胞が、髄質上皮細胞の維持・再生にどのように寄与しているのか検討した。その結果、髄質上皮幹細胞を含む髄質上皮細胞は、胎生期から生後1週齢までのβ5t発現前駆細胞由来の細胞によって維持されており、生後1週齢以降のβ5t発現前駆細胞の寄与は、正常時だけでなく胸腺退縮後の再生時もわずかであった。これらの結果から、成体期の髄質上皮細胞はβ5t発現前駆細胞から新たに作り続けられているのではなく、新生仔期までに産生された髄質系列の細胞によって維持・再生されることが明らかになった。