1993年 - 1995年
世界経済のブロック化の分析
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際学術研究
1.1950年代にヨーロッパ先進諸国が自らの経済を共同体に統合しようとする機運が生まれたのを契機に地球上の各地域に経済のブロック化が進行しつつある。当研究は、その理由を分析し、将来の地球経済再編の動きを探ることを目的としている。
2.当初、少数の関係国で構成されたヨーロッパ共同体(EU)、北米自由貿易国(NAFTA)、アジア自由貿易圏(AFTA)等は次々と周辺諸国を巻き込み、世界をヨーロッパ、米州大陸、アジアの三大ブロックに分割する動きを見せている。更にこの三大ブロックの内の何れか二つが合併して、スーパー経済ブロックとなり、やがて世界は二大経済共同体が対立することになると言う見方も強く出されている。
3.この二大スーパーブロック化への統合が進む過程で、現在のヨーロッパ、北米及びアジアの三ブロックの内、何れの二ブロックが結合されるか、又、果たしてその結合がスムーズに進むかの検討が当研究のテーマの一つである。二大ブロックが統合されるに当たり、取り残される第三のブロックが何もせず座視することはないであろう。多分対抗して統合を検討している二つの内の一つに対して現在交渉中のパートナーより、より有利な条件を提示してそのパートナーを自らのパートナーとして獲得し、自らがスーパーブロックを形成しようとする動きが起り得る。この三大ブロックから二大スーパーブロックへの再編上の問題をゲーム理論的に分析した。その結果、三大ブロックが互いに似たような大きさである場合、結合されるべき二ブロックの安定的組み合わせ(コアー)は存在せず、再編成過程が世界経済を不安定にすると予測された。
4.アジア諸国のブロック化は欧州、米州に較べて遅れている。当プロジェクトの一つの研究はアジア諸国は果たしてブロック化への道を歩むべきか否かを検討した。アジア諸国間の経済格差の大きい現在、ブロック化は必ずしも関係諸国に便益をもたらすものではないと判定された。
5.欧州、米州では現在のアジア経済ブロック(AFTA)がEUやNAFTAに比べてより閉鎖的であるとの見解が強い。当研究ではこの批判をエコノメトリックスの手法で実証的に検討した。その結果、批判は当を得ていないとする結論が得られた。
6.何等かの理由で貿易が杜絶するときのリスクを経済のブロック化によって回避出来るかの理論的分析も当プロジェクトの重要な研究の一つである。その結果(1)所得の高い国が必ずしもリスク回避の為に大きなプレミアムを支払う用意があると言えず、又(2)リスク回避プレミアムの大小は限界効用が逓減することのみでは判定出来ないとする理論的知見が得られた。
7.ブロック化によるリスク回避の方法とブロック化以外の方法、例えば、原料、食料の備蓄や産業構造の特殊化の回避、などとも比較した。従来、主として生産の効率性からの見地からブロック化の検討がされているのに対して、リスク回避動機からブロック化を分析しブロック化の重要な側面を明らかにした。
8.産業発展に伴う地球環境汚染の被害は今や一国に止まらない。従って地球環境対策と経済のブロック化には密接且つ重要な関係がある。この環境対策の見地からも地球経済のブロック化を研究した。理論的には現在強く支持されている地球温暖防止の為のグローバル均一炭素税の提案は、理論的には正しくないとする知見が得られた。
9.更にアジア地域での貿易自由化がもたらす環境汚染の進行についての軽量経済学的予測を0行った。
2.当初、少数の関係国で構成されたヨーロッパ共同体(EU)、北米自由貿易国(NAFTA)、アジア自由貿易圏(AFTA)等は次々と周辺諸国を巻き込み、世界をヨーロッパ、米州大陸、アジアの三大ブロックに分割する動きを見せている。更にこの三大ブロックの内の何れか二つが合併して、スーパー経済ブロックとなり、やがて世界は二大経済共同体が対立することになると言う見方も強く出されている。
3.この二大スーパーブロック化への統合が進む過程で、現在のヨーロッパ、北米及びアジアの三ブロックの内、何れの二ブロックが結合されるか、又、果たしてその結合がスムーズに進むかの検討が当研究のテーマの一つである。二大ブロックが統合されるに当たり、取り残される第三のブロックが何もせず座視することはないであろう。多分対抗して統合を検討している二つの内の一つに対して現在交渉中のパートナーより、より有利な条件を提示してそのパートナーを自らのパートナーとして獲得し、自らがスーパーブロックを形成しようとする動きが起り得る。この三大ブロックから二大スーパーブロックへの再編上の問題をゲーム理論的に分析した。その結果、三大ブロックが互いに似たような大きさである場合、結合されるべき二ブロックの安定的組み合わせ(コアー)は存在せず、再編成過程が世界経済を不安定にすると予測された。
4.アジア諸国のブロック化は欧州、米州に較べて遅れている。当プロジェクトの一つの研究はアジア諸国は果たしてブロック化への道を歩むべきか否かを検討した。アジア諸国間の経済格差の大きい現在、ブロック化は必ずしも関係諸国に便益をもたらすものではないと判定された。
5.欧州、米州では現在のアジア経済ブロック(AFTA)がEUやNAFTAに比べてより閉鎖的であるとの見解が強い。当研究ではこの批判をエコノメトリックスの手法で実証的に検討した。その結果、批判は当を得ていないとする結論が得られた。
6.何等かの理由で貿易が杜絶するときのリスクを経済のブロック化によって回避出来るかの理論的分析も当プロジェクトの重要な研究の一つである。その結果(1)所得の高い国が必ずしもリスク回避の為に大きなプレミアムを支払う用意があると言えず、又(2)リスク回避プレミアムの大小は限界効用が逓減することのみでは判定出来ないとする理論的知見が得られた。
7.ブロック化によるリスク回避の方法とブロック化以外の方法、例えば、原料、食料の備蓄や産業構造の特殊化の回避、などとも比較した。従来、主として生産の効率性からの見地からブロック化の検討がされているのに対して、リスク回避動機からブロック化を分析しブロック化の重要な側面を明らかにした。
8.産業発展に伴う地球環境汚染の被害は今や一国に止まらない。従って地球環境対策と経済のブロック化には密接且つ重要な関係がある。この環境対策の見地からも地球経済のブロック化を研究した。理論的には現在強く支持されている地球温暖防止の為のグローバル均一炭素税の提案は、理論的には正しくないとする知見が得られた。
9.更にアジア地域での貿易自由化がもたらす環境汚染の進行についての軽量経済学的予測を0行った。
- ID情報
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- 課題番号 : 05044021
- 体系的課題番号 : JP05044021