2019年
屋久島西部低地林における過去20年間の野生ニホンザルの個体数変動
霊長類研究 Supplement
- 巻
- 35
- 号
- 0
- 開始ページ
- 60
- 終了ページ
- 61
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.14907/primate.35.0_60_2
- 出版者・発行元
- 日本霊長類学会
<p>屋久島西部の低地林では,野生のヤクシマザルが数多く生息しており,1970年代より長期継続調査が行われている。この地域は,国立公園特別保護地域などに指定されており,1970年代から狩猟は行われておらず,林道の整備を除けば,人為的な植生の改変もない。1999年~2018年の群れの個体数の情報を元に,この地域のヤクシマザル8群の個体数の変動を比較した。集中的な調査をしている群れについては,できるだけ8月に近い時点の個体数を分析した。また,毎年の頭数調査によって頭数を数えている群れについては,7-8月の個体数を分析した。北部地域では,群れの消滅や頭数の減少が観察された。一方,中央部の群れでは,個体数の増加や群れの分裂が観察された。出産率は,北部の群れで低く中央部の群れで高かった。これは北部での頭数の減少と,中央部での頭数の増加とも一致する。いくつかの群れでは,中央部から北部へ,群れの行動域が徐々に移っていった。これは,中央部で増加し,おそらく個体密度が増え,より個体密度の低い北部に群れが移動した可能性が考えられる。中央部と北部の違いが生じている原因の一つとして,森林の伐採歴の違い指摘できるだろう。中央部は1940年台までにかなり大規模の伐採が行われたことが分かっている。北部でも伐採はあったものの,中央部ほどには伐採されなかった。つまり,中央部の方がより若い森林であり,サルの食物が豊富な可能性があるのかもしれない。</p>
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.14907/primate.35.0_60_2
- CiNii Articles ID : 130007813519