講演・口頭発表等

2012年7月7日

学校教育における『日本の伝統芸能の教育』の実際―公立高等学校における事例を中心に

日本国際文化学会第11回全国大会
  • 鈴村裕輔

記述言語
日本語
会議種別
口頭発表(一般)
主催者
日本国際文化学会
開催地
国際文化会館

1947年に最初の学習指導要領が定められた際、「ヨーロッパ音楽を主体とするが、なお日本の伝統的音楽の音組織による歌も次第に入れる」(小学校第4学年)、「ヨーロッパ音楽に対する理解を深めるとともに、日本の伝統的音楽及び楽器についての理解も持たせる」(小学校第6学年)というように、音楽教育の主体はヨーロッパ音楽であり、日本の伝統音楽や伝統芸能に関する教育は従属的な立場に置かれていた。その後、小学校においてわらべうたが導入されたり(第4次改訂版[1977年]小学校第5、6学年)、「表現の教材には、郷土の民謡を含めて扱うようにする」(第5次改訂版[1978年]高等学校音楽I)とされるなど、日本の伝統音楽や伝統芸能に関する教育は前進を見せた。そして、小学校の学習指導要領第7次改訂版(2002年)では、「国際社会に生きる児童に必要な資質能力の育成の観点から、諸外国及びわが国の伝統的な音楽文化を味わい尊重する態度の育成を一層重視する」と規定され、この傾向は、新学習指導要領においても踏襲されている。このよう学習指導要領の内容の変化から、学校教育における日本の伝統音楽や伝統芸能に関する教育は、制度的に充実化を担保されていることが推察される。それでは、このような制度上の措置は実際の教育においてどのように反映されているのであろうか。
本発表は、公立高等学校を主たる対象として、学校教育における日本の伝統音楽、伝統芸能に関する教育がどのようになされているのか、また、どのような問題に直面しているのかを予備的に検討するものである。具体的には、2011年5月から6月にかけて、東京都の公立高校3校に在職する音楽科教諭3名に対して聞き取り調査を行った。その結果、3校とも日本の伝統音楽、伝統芸能に関する授業を行う時間が少ないか皆無であることが分かった。その理由としては、音楽の授業時間数の少なさ、予算の不足、日本の伝統音楽や伝統芸能に対する教員の知識の不十分さ、受講生の関心の低さなどが挙げられた。また、各校とも学校行事として能楽や歌舞伎の鑑賞が行われていたが、音楽科の所管ではなく国語科の所管であることが分かった。今回の調査は学習指導要領の記述が実際の教育現場でどのように行われているかという点予備的に調べるものであり、標本数は少なかった。しかし、学習指導要領の記述が教育現場の実態に即していない、あるいは現場が学習指導要領の内容を実施できる体勢にない可能性のあることが示唆された。今後は、標本数を増やし、より体系的な調査を行う必要があると思われた。

リンク情報
URL
http://www.jsics.org/pdf/conference/11-conference.pdf