2021年4月 - 2022年3月
犯罪不安の生起メカニズムの検討:実験的手法に基づいて
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
本研究は、防犯対策の告知が犯罪不安に与える影響を検討することを目的とした。先行研究は防犯対策の実施が犯罪不安を上昇させる可能性を指摘したが、実験を用いて因果関係を確かめることはできていなかった。また、先行研究の中には防犯対策が犯罪不安を低減させると指摘するものあるが、こうした知見の差異が何に起因するものなのかは明らかでなかった。そこで、本研究は防犯対策が想定する犯罪の重大さの違いに着目し、質問紙実験を行った。実験参加者を調査会社を介して募集し、Web上で実験を実施した。回答者は軽微防犯群、重大防犯群、統制群の3群に分かれ、それぞれ架空のストーリーを提示された後、犯罪不安などを尋ねる質問項目に回答した。提示されたストーリーは海外旅行で滞在するホテルを訪れるというもので、軽微防犯群の実験参加者にはそれに加えて警備員が巡回を行っているという情報を、重大防犯群の実験参加者にはその警備員が銃器を所持していることを示した。分析の結果、重大防犯群の実験参加者のリスク認知や犯罪不安はその他の群の実験参加者よりも高かった。このことから、重大な犯罪に対する防犯対策は犯罪不安などを増加させる可能性が示唆された。また、軽微防犯群の実験参加者の犯罪不安は統制群と有意な差がなかった。このことから、軽微な犯罪に対する防犯対策を告知しても犯罪不安が上昇しないことをが示唆された。また、防犯対策によって犯罪不安が上昇するか低下するかといった、先行研究の知見の差異は、防犯対策が想定する犯罪の違いによるものである可能性が示された。
- ID情報
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- 課題番号 : 21J11739
- 体系的課題番号 : JP21J11739
この研究課題の成果一覧
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論文
1-
Psychology, Crime & Law 1-22 2022年4月13日 査読有り筆頭著者
講演・口頭発表等
2-
日本社会心理学会第63回大会 2022年9月15日
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日本犯罪心理学会第59回大会 2021年10月2日