基本情報

所属
富山大学 学術研究部医学系 教授
学位
博士(医学)(医博乙第192号)(2007年3月 福井大学)

研究者番号
90334812
ORCID iD
 https://orcid.org/0000-0003-4516-9283
J-GLOBAL ID
200901044061088429
researchmap会員ID
5000013321

外部リンク

神経解剖学と神経生理学の技法を駆使して神経回路を明らかにしようと考えています。現在の主なテーマは聴覚系の神経回路であり、並列処理された音情報が一番最初に統合される脳部位である中脳下丘の局所神経回路の研究を行っています。また、過去には脊髄運動ニューロンの発現する伝達物質の研究を行ってきました。これらと並行して末梢神経の損傷や再生に関わる臨床研究を耳鼻咽喉科と共同で行ってきました。

過去の発表論文(~2020)についての簡単な解説:2021年以降の論文についてはブログを御覧ください
下丘のニューロンの約8割が興奮性であり、残り2割は抑制性です。抑制性ニューロンには大型のものと小型のものがほぼ同数存在し、大型のものは細胞体に密な興奮性入力を受けますが、小型のものや、興奮性細胞にはこのような特徴は見られません。さらに、大型の抑制性細胞は下丘の上位核である、視床内側膝状体に投射し、これを抑制することがわかりました(Ito et al., 2009)。
では大型抑制性細胞に特徴的な密な興奮性入力はどこから来るのでしょうか?
下丘に見られる興奮性終末は含有する分子からVGLUT1陽性、VGLUT2陽性、VGLUT1と2の共陽性の3種類に分類されるのですが、大型抑制性細胞の周りの興奮性終末はほぼ100% VGLUT2陽性でした。つまり、VGLUT2を発現して、VGLUT1を発現しない、下丘に投射するニューロンが大型抑制性細胞を支配する候補細胞であることになります。そこでまず、聴覚神経核におけるVGLUT1とVGLUT2の発現パターンをin situ hybridizationを用いて決定しました(Ito et al., 2011, 2015b, 2018b)。さらに下丘に投射する細胞を逆行性トレーサーを用いて標識した後にその細胞がどのようなVGLUT1とVGLUT2の発現パターンを示すか確かめました。この結果、下丘は多数の神経核からの入力を受けるのですが、このうち腹側蝸牛神経核からの入力はVGLUT1と2の両方を含有するため除外されることが示唆されました(Ito and Oliver, 2010, 2012)。
次に、これらの下丘に入力する神経核のニューロンが実際に大型抑制性細胞に入力するか順行性標識法を用いて調べました。順行性トレーサーを下丘に注入することで、下丘の興奮性ニューロンが近傍の多数の大型抑制性ニューロンに軸索側枝を伸ばして入力すること、また1個の興奮性ニューロンは1個の大型抑制性ニューロンに対しわずか数個しか軸索細胞体シナプスを形成しないことを明らかにしました(Ito and Oliver, 2014)。下位の神経核の場合も1個の興奮性ニューロンは1個の大型抑制性ニューロンに対しわずか数個しか軸索細胞体シナプスを形成しませんでした。また、1個の大型抑制性細胞体上に下位の核と局所ニューロンの入力が収束していました(Ito et al., 2015a)。このことは、大型抑制性ニューロンが複数の神経核からの音情報を統合することを示唆しています。狂犬病ウイルスを用いた細胞種特異的単シナプス追跡によっても、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンが異なる入力様式をもつことが示されました(Chen et al., 2018)。これに対応するように、大型抑制性ニューロンは他のニューロンよりも周波数が時間変化する複雑音に対して強く応答すること、下丘内にこのような音に対する地図が存在するが、この地図の形が興奮性ニューロンと大型抑制性ニューロンで異なることが明らかとなりました(Ito, 2020)。
この大型抑制性細胞は幅広い哺乳類の種に見られるばかりでなく(Ito et al., 2015, 2018a, b, 2019)、哺乳類に至る系統と3億年前に分岐した系統である鳥類にも見られたため、下丘の基本神経回路は有羊膜類で広く保存されていると考えられます(Ito and Atoji, 2016)。
従来の神経解剖学的技法に加えて、工学部との共同研究で、下丘ニューロンの機能イメージングにも取り組んでいます。極めて薄い構造のため、電極を用いた記録が困難であった下丘皮質第1層のニューロンの音刺激応答性をin vivo カルシウムイメージングで記録することに成功しました(下丘で初)。この領域の細胞は低い周波数の純音に対してよく応答することが明らかになりました(Ito et al., 2014)。


論文

  55

MISC

  45

書籍等出版物

  3

講演・口頭発表等

  33

担当経験のある科目(授業)

  10

所属学協会

  4

共同研究・競争的資金等の研究課題

  37

学歴

  2

学術貢献活動

  1

その他

  1