症例は72歳男性。1年前から意欲低下と易怒性、半年前から短期記憶障害が出現し徐々に悪化した。1週間前より急な頭痛、嘔気、会話不能、家族の顔が分からないなどの症状が認められ近医を受診した。急性発症の神経症状と高血圧の存在から脳卒中が疑われたが、頭部MRI拡散強調像にて前頭葉の皮髄境界部に線状の高信号域を認め、当院紹介となった。診察には非協力的で易怒性を示した。HDS-R 3点、MMSE 11点。四肢筋力低下、腱反射消失あり。末梢神経伝導検査にて脱髄を認めた。頭部MRI所見から神経核内封入体病(NIID)を疑い、皮膚生検を施行。線維芽細胞、汗腺細胞、脂肪細胞に抗p62抗体陽性の核内封入体を認め、NIIDと診断された。NIIDは変性疾患だが、本例のような脳卒中様のエピソードを示す例が報告されている。その機序として血管攣縮やてんかん原性が考えられるが、今後の更なる検討が必要である。(著者抄録)