我々は、自己に対する否定的自動思考、思考の制御不能感、そして活動の回避といった認知面や行動面での特徴を有する70代の抑うつ症状を呈した女性に対して、うつ病のためのメタ認知トレーニング(metacognitive training for depression:D-MCT)を実施した。D-MCTは、マニュアルに基づき、1セッション約60分で計8セッション行った。その結果、うつ病に特徴的な思考に気づくことができるようになり、抑うつ症状、否定的自動思考、思考の制御不能感が改善し、患者本人にとって価値ある活動に取り組むことが可能となった。さらに、これらの改善は3ヵ月後のフォローアップまで維持されていた。この結果から、高齢のうつ病患者への心理社会的治療法として、D-MCTが有効である可能性が示唆された。(著者抄録)