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査読有り
2019年3月

遺伝性乳癌卵巣癌症候群に対してリスク低減卵管卵巣摘出術を施行した1症例

東海産科婦人科学会雑誌
  • 市川 亮子
  • 吉澤 ひかり
  • 宮崎 純
  • 大脇 晶子
  • 坂部 慶子
  • 伊藤 真友子
  • 大谷 清香
  • 鳥居 裕
  • 宮村 浩徳
  • 西尾 永司
  • 西澤 春紀
  • 関谷 隆夫
  • 藤井 多久磨
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55
開始ページ
169
終了ページ
173
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
東海産科婦人科学会

遺伝性乳癌卵巣癌症候群(以下HBOC:hereditary breast and ovarian cancer syndrome)はBRCA遺伝子の変異があり、乳癌や卵巣癌などに罹患するリスクが高い遺伝性腫瘍症候群の一つである。当施設では、HBOC関連癌のうち卵巣癌、卵管癌および腹膜癌の診療にあたり、卵巣癌未発症のBRCA変異保持者に対してサーベイランスおよびリスク低減卵管卵巣摘出術(以下RRSO:risk-reducing salpingo-oophorectomy)を提供している。今回は、HBOCに対してRRSOを施行した一例について考察を加えて報告する。【症例】47歳。2妊2産。子宮筋腫の既往あり。乳癌に罹患した姉にBRCA2遺伝子に変異を認めたことから、BRCA遺伝学的検査目的にカウンセリング室を来談し、検査の結果HBOCと診断され、RRSO施行の是非について相談のため産婦人科に紹介受診となった。患者はRRSO施行推奨年齢に達していたため、RRSOのメリットとデメリットを説明し、RRSOを行う方針となった。手術は腹腔鏡下で両側付属器切除を行い、切除検体については詳細な病理学的検討を行って、STIC(Serous tubal intraepithelial carcinoma)や浸潤癌がないことを確認した。術後は腹膜癌発症の有無を経過観察中である。HBOCは通常の産婦人科患者のうち一定の割合を占める比較的頻度の高い遺伝性腫瘍である。産婦人科医師はBRCA1/2変異保持者に対しては卵巣癌サーベイランスの限界、リスク低減手術の予想される効果と副作用を説明できる知識をもち、RRSOを行うにあたっては、卵巣癌の易罹患者であることを念頭においた手術操作、術後管理が必要である。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 0915-7204
  • 医中誌Web ID : 2019169547

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