2019年3月
経母体ステロイド治療後に縮小した先天性肺気道奇形の1例
東海産科婦人科学会雑誌
- 巻
- 55
- 号
- 開始ページ
- 135
- 終了ページ
- 144
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 東海産科婦人科学会
先天性肺気道奇形(Congenital pulmonary airway malformations:CPAM)は、胎児期に気管支系や肺胞の発達異常によって生じる先天性肺腫瘤で、近年では胎児超音波スクリーニングが普及し、出生前に診断される症例が増加している。本症の予後は一般に良好であるが、腫瘤の増大に伴い胎児水腫をきたす場合があり、胎児治療の手段として嚢胞羊水腔シャントや経母体ステロイド投与の有効性が報告されている。今回、出生前にCPAMと診断し、胎児腹水と羊水過多を合併した症例に経母体ステロイド投与を行い、胎児腹水の消失と腫瘍の縮小を認めた症例を経験した。症例は37歳、2妊1産。前医で妊娠20週の胎児超音波検査で左胸腔内に類円形の高輝度腫瘤を認め、本症を疑い経過観察が行われたが、妊娠23週より胎児腹水が出現し、妊娠25週で当院へ紹介となった。初診時の超音波検査で、左胸腔内に類円形の高輝度腫瘤像を認め、心臓が右側に偏位し、さらに胎児腹水と羊水過多(Amniotic fluid index:AFI 25.3cm)を認めた。また、腫瘤内への大血管からの血流はなく、実質性腫瘤像を呈することからCPAMのmicrocystic typeと診断した。胎児水腫の基準は満たさないが、腫瘤の増大に伴う圧迫による影響を考慮して、ステロイド治療の適応と判断した。インフォームド・コンセントを行った上で、妊娠26週0日に母体にbetamethazone 12mgを24時間おきに2回投与した。その後、3D超音波検査によるフォローアップで腫瘤は徐々に縮小し、妊娠32週には検出不能となり、胎児腹水は消失し羊水過多は改善し、妊娠39週1日に自然経腟分娩となった。児は3345gでApgar Score 9/9で出生し、出生時の胸部CTで左肺の過膨張と10mm大の嚢胞像を認めたが、呼吸障害を認めなかった為、待機的管理とした。その後、2歳時に肺炎を繰り返した為、胸腔鏡下左肺上葉切除術が施行されたが、術後経過は良好である。本症例のようなCPAMに対する3D超音波検査による診断は腫瘤の正確な評価を可能とし、経母体的ステロイド療法は、胎児予後の改善に寄与する可能性がある。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0915-7204
- 医中誌Web ID : 2019169543