MISC

2021年1月

左心耳閉鎖のevidenceと課題

日本心臓血管外科学会雑誌
  • 山本 平
  • ,
  • 遠藤 大介
  • ,
  • 松下 訓
  • ,
  • 嶋田 晶江
  • ,
  • 大石 淳実
  • ,
  • 土肥 静之
  • ,
  • 浅井 徹
  • ,
  • 天野 篤

50
1
開始ページ
xxxvi
終了ページ
xlviii
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
(NPO)日本心臓血管外科学会

左心房ならびに左心耳は、独特の発生学的・解剖学的および生理学的特性があり十分に理解する必要がある。最近では、画像診断法の進歩により多くの新たな知見が得られている。臨床では心房細動の発症リスクは高齢化とともに増加し、心房細動によってもたらされる脳梗塞などの公衆衛生の負担とその予測危険因子や予防戦略、より効果的な治療法を見出す必要がある。新たにatrial myopathyという概念が登場し、動物モデルとヒトの研究により、さまざまなメカニズムを介したatrial myopathy、心房細動、脳卒中の密接な相互作用が明らかになった。線維化などの構造的、電気的リモデリングおよび自律神経のバランス悪化とこれらのメカニズム間の複雑な相互作用により心房細動が悪化し継続する悪循環が導かれ、最後に左心耳内の血栓による血栓塞栓症のリスクが高くなる。心房細動患者の抗凝固療法が強く推奨されているが、現実には多くの患者が至適治療の継続が困難になっている事実もある。このため、左心耳(LAA)の外科治療の必要性が強調され、LAA閉塞あるいは切除するためのいくつかの外科的手法が開発された。抗凝固療法と比べ費用対効果の面からも良好な結果が得られている。どの方法が最適な治療結果をもたらすかはまだ明らかではないが、今後、左心耳の解剖学、生理学を理解し、心房細動時のLAA remodelingに伴う形状変化、サイズや機能の変化、血栓形成の状況を把握し早期に治療介入することがきわめて重要になるであろう。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 0285-1474
  • eISSN : 1883-4108
  • 医中誌Web ID : 2021121528

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