共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

ドイツ語圏における公共圏の歴史的展開―近代ジャーナリズムの文化史的諸前提

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究  若手研究

課題番号
18K12346
体系的課題番号
JP18K12346
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
3,900,000円
(直接経費)
3,000,000円
(間接経費)
900,000円

研究実施計画に従って、本研究課題の対象となる各時代(①1800年前後、②19世紀前半、③19世紀後半)についての研究調査を進めた。
①については、プロイセン人作家H・v・クライストと「政治的なるもの」を主題とする論文集(共著・編訳)の共同編纂に加わり、この作家と同時代の政治公共圏との関わりを精査した。具体的には、市民社会の前提となる旧体制下の君主制と市民的価値観との対決の諸局面をクライストの複数のテクストに即して明らかにしたほか、近年の重要な学術論文の翻訳をおこなった。この主題のもとでクライストを多角的に論じる試みは日本において類例がなく、同書の刊行には学術的に見てきわめて大きな意義が認められる。
②については、H・ハイネとK・グツコーという二人の作家を中心に、当時の公共圏の文化史的諸前提について考察した。具体的には、1800年頃に生じた時間意識の変容(「迅速化」の傾向)と19世紀の作家たちの「世代」意識の覚醒という二つの問題圏を架橋し、その成果を共著書の一部として発表した。
③については、(1)同時代に流行した「家庭雑誌」というジャンルに着目し、その先駆けであるグツコーの『家の竈の団欒』誌を例に、公共圏と「家族」という文化的・社会的制度との関係の分析を進めた。また、当初の計画からの発展として(2)同時代に社会の広範な領域で巨大な影響力を誇った「社会ダーウィニズム」の言説について、ドイツ語圏におけるその最初期の紹介者である自然科学者L・ビューヒナーを例に、ASLE-Japan/文学・環境学会の全国大会で口頭発表をおこない、公共圏における科学的言説の意義について検討した。
そのほか、日本独文学会の機関誌特集「文芸公共圏」の責任編集を担い、特集テーマ導入の序論を執筆した。同論考の重要性は、公共圏論の文脈でも軽視されがちな「文芸公共圏」という主題の現在的射程を明確に打ち出した点にある。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12346
ID情報
  • 課題番号 : 18K12346
  • 体系的課題番号 : JP18K12346

この研究課題の成果一覧

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MISC

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