論文

2015年12月

長寿リスク内包証券の価値評価に纏わる数理モデルについて

生命保険論集(掲載予定)
  • 加藤 恭

193
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)

生命保険リスクを内包する保険リスク証券の市場の拡大が進んでいる中、特に近年、医療技術の発展に伴う長寿化による「長寿リスク (longevity risk)」の顕在化が見られ、長期年金運用における新たなリスク要因として注目を浴びていると共に、そのリスクを移転するための証券化についても提案がなされている 。長寿リスクの計測・管理は保険数理や数理ファイナンスにおける理論研究、及び保険商品や保険リスク証券の設計・金融資産運用実務等においても重要な課題となっているが、そのためには将来の生存率のダイナミクスに関する適切なモデリングや、古典的な金融商品価値評価法の適用が難しい長期の満期を持つ商品のプライシング手法の構築が必要となる。本研究では、生命保険リスクを表す本質的な要因である生存率 (survival rate) または死亡率 (mortality rate) の長期的ダイナミクスを数理的に記述するために、 [1]等で用いられている二重確率計数過程を用いたモデルを拡張し、将来の金利リスクや長寿リスクに対する証券発行主体及び取引相手の想定する広義のシナリオの下での証券価格評価手法を提案する。より具体的には、金利や死力を表現するファクターあるいは生存率等に対して将来時点における不確実性を含んだ「ランダマイズドシナリオ」を与え、その下での長寿リスク内包証券価格の評価式を条件付確率微分方程式 (conditioned stochastic differential equation; CSDE) を用いて導出する。更に、上記の方法のストレステストへの応用についても考察する。

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