2022年
こころの健康相談統一ダイヤル相談員を担った精神科看護師の実態調査
日本精神科看護学術集会誌
- ,
- 巻
- 65
- 号
- 2
- 開始ページ
- 70
- 終了ページ
- 73
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (一社)日本精神科看護協会
こころの健康相談統一ダイヤルの相談員を担った精神科看護師の実態調査をすることを目的とした。日本精神科看護協会より相談事業に携わった看護師にアンケートの調査協力をメールにて依頼した。アンケートはGoogleフォームを活用した。倫理的配慮として,パートナー株式会社訪問看護ステーションぶるーむの管理者に研究の許可を得た。相談事業の委託を受けた日本精神科看護協会にアンケート調査の許可を得た。また,対象者に対して,研究の目的,内容,結果の公表,研究参加により不利益を被らないことを文書にて説明し,フォーム内でのアンケートの同意欄にチェックをすることで同意を得て回収した。なお,発表者らに開示すべき利益相反関係にある企業などはない。アンケートは,136名に配布し,47件の回答があった(回答率:34.6%)。対象者の属性は,男性が23名(48.9%),女性が24名(51.1%)。精神科経験年数は,3年以上5年未満が2名(4.3%),5年以上10年未満が8名(17%),10年以上15年未満が8名(17%),15年以上20年未満が11名(23.4%),20年以上が18名(38.7%)であった。所属は,病院が35名(77.8%),訪問看護事業所が4名(8.8%),教育機関が3名(6.7%)そのほかが3名(6.7%)。18名が精神科認定看護師,3名が精神看護専門看護師であった。78.7%が自分で相談員に応募したと回答した。すべての看護師が「相談員をやってよかった」と回答した。97.9%の看護師が「今後に活用できそう」と回答した。78.9%が「精神科看護へのモチベーションにつながった」と回答した。受けた相談内容で自信をもって対応できたものは,精神的な問題(67.8%)がもっとも多かった。次いで心理的情緒的問題の18名(39.8%),対人関係の問題の17名(37%),仕事の悩み,不安問題の14名(30.4%)であった。経済上の問題は,自信をもって対応できたという回答は,なかった(0名)。受けた相談で難しかった項目は,経済上の問題が,22名(48.9%)でもっとも多かった。ついで,対人関係の問題の15名(33.3%),仕事の悩み,不安問題の11名(24.4%),精神的な問題7名(15.6%)であった。一番難しかったことは,適切な支援機関の情報提供が18名(39.1%)ともっとも多かった,次いで,必要な相談・助言9名(19.6%)で,アセスメントが7名(15.2%),傾聴が5名(10.9%)であった。精神科看護の経験年数が長く,精神科認定看護師などスペシャリストの参加が目立った。いままでの職場での経験を活かし,ほとんどの相談に対して自信をもって対応していたと考えられる。精神科看護師の技術を社会に還元する場があったことが,満足度やモチベーションの向上につながったのではないかと考えられる。個々の看護師が「今後に活用できそうだ」と回答していることからも,精神科看護師のスキル向上につながりケアの質の向上につながるのではないかと考えられた。一方,難しかった点としては。経済上の問題,適切な支援機関の情報提供など地域の支援機関の把握という意見が多かった。経済的な問題は自殺に結びつきやすい。地域の福祉資源の把握,社会資源との連携など包括的な支援の活用が精神科看護師の今後の課題である。(著者抄録)
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- 医中誌Web ID : 2023272694