2018年4月 - 2020年3月
炎症の遷延化をもたらすサイトカイン遺伝子群エピジェネティック制御
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
転写因子GATA2は炎症性サイトカイン遺伝子の発現を活性化し、炎症惹起に関わることがわかった。さらに、GATA2欠損が全身的な炎症に与える影響についても解析を進めた結果、リポ多糖(LPS)投与による急性の敗血症誘導に対して、GATA2へテロ欠損マウスは有意に耐性を示した。敗血症病態形成にはヒスタミン産生細胞が重要な役割を担うと考え、ヒスタミン産生細胞を生体内でモニターできるレポータートランスジェニックマウス(Hdc-GFPマウス)を樹立し、敗血症時のヒスタミン産生細胞の遊走を解析した。その結果、LPS誘導性敗血症時には、肺にヒスタミン産生細胞が最も顕著に遊走され、GATA2へテロ欠損マウスではヒスタミン産生細胞の遊走が軽減した。次に、細菌感染による敗血症モデルとして盲腸結紮穿孔(CLP)腹膜炎誘導に対するGATA2へテロ欠損マウスの感受性を検討した。その結果、GATA2へテロ欠損マウスではCLP腹膜炎による急性期の炎症誘導は抑制されたが、細菌感染の遷延とそれに伴う慢性炎症を示すことがわかった。これらの結果から、GATA2は急性期炎症惹起にかかわる一方で、病原細菌に対する防御機構を担う機能を持つと考えられた。GATA2を発現する培養マスト細胞を用いたChIPシーケンス解析から、IL4、IL13、IL6などの遺伝子座にGATA2の結合サイトが存在することがわかった。これらのサイトカイン遺伝子はLPS処理により発現誘導されるが、GATA因子阻害剤であるミトキサントロン処理によりこの発現誘導がキャンセルされた。炎症性サイトカイン遺伝子座へのGATA2結合量はLPS処理後も有意な変化を示さなかった。これらの結果からGATA2はLPS刺激に応答する他の因子と協調して機能することにより、炎症性サイトカイン遺伝子の発現誘導に関わると推測された。
- ID情報
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- 課題番号 : 18H05041
- 体系的課題番号 : JP18H05041
この研究課題の成果一覧
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論文
1-
Genes to cells : devoted to molecular & cellular mechanisms 25(7) 443-449 2020年7月 査読有り
MISC
1-
Precision Medicine 2(10) 73-76 2019年8月 招待有り