論文

査読有り
2010年11月

陸軍将校の選抜・昇進構造

教育社会学研究
  • 武石典史

87
87
開始ページ
25
終了ページ
45
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.11151/eds.87.25
出版者・発行元
日本教育社会学会

教育社会学的な歴史研究は,官僚群との対立や青年将校運動といった昭和陸軍の動きを,「陸軍将校=農業層」「帝大生・官僚=新中間層」という階層的差異をもとに葛藤モデルから論じてきている。しかし,そこでは陸軍将校の有力構成員たる陸幼組は分析対象から捨象されがちだった。本稿は,陸軍将校を「陸幼組/中学組」という二つの集団に分けつつ,その選抜,学歴キャリア,昇進の諸構造を検討したうえで,昭和陸軍の動向に考察を加えるものである。陸軍将校を構成する陸幼組と中学組は社会的背景の重なりは小さかった。また,前者が陸士,陸大の成績が良かったゆえ,昇進でも(農業出身の多い)後者より優勢だった。すなわち,学歴・成績主義を原理に形成される将校集団の構造は,上層において農業色が弱化し都会色が強まるという傾向を帯びていたのである。大正後期以降の政治的変化のなかで,陸軍は自己益と国益を,統帥権という威力に拠って重ね合わせていこうとする。統帥権の顕在化,および軍事専門職としての強い自覚を促すという,新たな社会状況のなかで始動した昭和陸軍の主力は,農業出身層ではなく,二・三代目の武官たちであり,官・軍エリートの衝突もこの文脈で把握されるべきだと思われる。確かに,農業層出身の陸軍将校は少なくなかった。しかし,彼らは昇進構造において傍流に位置し,影響力をもちえなかったのである。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11151/eds.87.25
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009553998
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AN0005780X
URL
http://id.ndl.go.jp/bib/10918261
URL
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10615912
URL
http://id.nii.ac.jp/1141/00015513/
URL
https://jlc.jst.go.jp/DN/JALC/10036752545?from=CiNii
ID情報
  • DOI : 10.11151/eds.87.25
  • ISSN : 0387-3145
  • CiNii Articles ID : 110009553998
  • CiNii Books ID : AN0005780X

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