2005年 - 2007年
口腔微生物叢の「揺りかご」:舌苔バイオフィルムの生物学
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
本年度は、昨年度に引き続き、口臭原因菌の一つと捉えられる口腔Veillonella属の硫化水素産生活性について検討し、(1)環境因子、とくに口腔内に多く存在する乳酸等の有機酸が硫化水素産生能に与える影響、及び、(2)硫化水素産生に関わる代謝酵素の検索を行った。培養したVeillonella atypica、 V. dispar、 V. parvulaの各標準株(ATCC株)の培養菌にシステインを加えて3時間インキュベートし、産生した硫化水素をメチレンブルー法で定量した。さらにこの反応系に乳酸等の各種有機酸を加え、硫化水素産生活性への影響を検討した。また、培養菌を超音波処理して無細胞抽出液を調整し、システインからの硫化水素産生に関わる酵素活性を検索した。Veillonellaのシステインからの硫化水素産生活性は、乳酸が存在すると著しく増加した。Veillonellaの無細胞抽出液は、システインから硫化水素を産生する酵素活性を示したが、無細胞抽出液に乳酸を添加しても活性の増加は認められなかった。以上のことから、Veillonellaは乳酸の存在下、システインから効率よく硫化水素を産生することが明らかになった。乳酸による促進作用は、酵素の活性化作用ではなく、システインの取込み促進であるものと予測された。口臭源の一つである硫化水素は口腔細菌によって産生されるが、その産生活性はpH(昨年度成果)や有機酸(今年度成果)という口腔環境によって影響を受けるものと考えられ、口腔環境のコントロールによって口臭を抑制し得るものと考えられる。
- ID情報
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- 課題番号 : 17659659
- 体系的課題番号 : JP17659659