2001年 - 2003年
地球磁場ダイナモの発生と逆転の物理
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
地球磁場の特徴は二つある。一つは、双極子磁場成分が卓越していること、そしてもう一つは、その双極子磁場の南北の極性が突然逆転するという、いわゆる磁場逆転現象が起きることである。我々は、これらの特徴を再現し、その機構を理解することを目指した計算機シミュレーションを行った。シミュレーションモデルは次の通りである。一定の角速度で回転する球殻状の容器内部に電気伝導性流体が入っている。内側の球面は高温、外側の球面は低温に保たれている。解くべき基本方程式は、温度場の時間発展も含めた磁気流体方程式(MHD方程式)である。シミュレーションの結果、外核内部の熱対流運動によって強い双極子磁場成分が自発的に生成・維持されるだけでなく、その磁場のが突然逆転する現象も再現することができた。データを詳しく解析すると、興味深いことが分かった。逆転は周期的ではなく、予測できないタイミングで起きる;双極子磁場が卓越した時期が長く続くのに対し、逆転にかかる時間は短い;逆転が起きるのは外核中の対流セルの対称性が崩れる瞬間である;球殻内部の熱対流運動によってMHDダイナモ機構を通じて生成された磁場には二つの状態(高い磁場エネルギー状態と、低いエネルギー状態)の二つあり、逆転が起きるのは、高いエネルギー状態の時である;双極子磁場の逆転に先んじて四重極磁場成分が成長するこのシミュレーションを行うために当初我々が開発したのは、緯度経度格子に基づいたMHDコードであった。しかしながら、大規模な並列・ベクトル計算機である地球シミュレータを用いた計算を行ってみたところ、基本格子系としての緯度経度格子の非効率さが深刻な問題となってきた。そこで我々はまったく新しい球面格子系を考案し、これをインヤン格子(陰陽格子)と名付けた。インヤン格子を用いたダイナモシミュレーションコードは、並列計算機に適しており、高い計算性能が発揮できることを確認した。
- ID情報
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- 課題番号 : 13680566