基本情報

所属
国立国語研究所 研究系 教授
学位
Ph.D.(2013年2月 Victoria University of Wellington)
修士(学術)(1992年3月 名古屋大学)
文学士(1990年3月 早稲田大学)

J-GLOBAL ID
200901009962930676
researchmap会員ID
1000175863

外部リンク

 研究分野は応用言語学日本語教育・グローバル教育ですが、特に語彙の学習と教育を専門にしています。近年は、コーパステストを使って、どうすれば効率よく必要な語彙を身につけることができるかを研究しています。(私の研究室で研究をしようという方には、言語の学習・教育への強い関心を持ってほしいと思いますし、応用言語学の論文が読めるだけの英語力・日本語力と、できれば統計やテスティングを身につけてきてほしいと思います。)最近は、日本国内の国語教育における語彙と漢字の学習順序にも関心を持っています。また、推論など、思考法を伸ばすような言語教育方法にも関心を持っています。

【最近の関心】
1.日本語の語彙学習、語彙教育

博士課程(2009年~2012年)で研究してきたこと(一部は現在も継続)

  • コーパスに基づく語彙リストの作成(語彙データベース、学術共通語彙リスト、文芸語彙リストなど)
  • 語彙重要度指標の比較(特にどの分散度の指標を頻度とどう組み合わせるか)
  • 現代日本語の語彙のジャンル別の特徴
  • 日本語高頻度語彙に含まれる(文字表記における)日中同形漢語の量的分析
  • コーパスに基づく文字リスト(漢字リストなど)の作成
  • 語彙頻度と漢字頻度はどのぐらい一致するか
  • 日本語の語彙学習負担は英語と比べて重いか
  • 読解テキストの語彙レベルの分析
  • 読解テキストを語彙学習リソースとして評価する指標LEPIXの開発

博士課程の研究の応用的な課題(2012年~)

  • 語彙データベースに基づく語彙プロファイラー(テキスト分析ツール)などのウェブサイトの開発
  • 語彙データベースに基づく各種語彙テストの開発
  • 地方自治体の広報文書の語彙面での「やさしい日本語」化、特に特徴語抽出の手法の利用
  • 学習者の語彙レベルに合わせてリライトされた読解テキストの開発
    • 例)非漢字圏初中級者対象の、早く楽しく読める読解教材の開発
    • 例)中上級学習者向けの読みの流暢さを上げるためのスピードリーディング用素材の開発
  • 話しことば(聞く/話す)の語彙と書きことば(読む/書く)の語彙の発達の相違
  • 第一言語の相違(中国語系/非中国語系など)による発達の相違
  • 語彙タイプによる発達の相違(漢字語/非漢字語、一般語彙/専門語彙など)
  • 理解語彙/使用語彙の発達の相違
  • 語彙知識の広さ(語彙量)と深さの関係
  • 漢字圏/非漢字圏学習者の既知語彙知識の相違に着目したプログラム運営の検討 ⇒3.
  • 小中学校の語彙の学年配当の検討と、漢字学年配当の再検討            など

2.思考力を伸ばす言語教育

  • 問いを立てることをどう学ぶか(教えるか)
  • 読解や聴解の前に問いを立て議論をすることの効果(動機づけ、理解の向上、など)
  • 複数テキストの組みあわせと、それによって生まれやすい思考や推論
  • 批判的思考、創造的思考に関わる高次思考スキルを言語教育(日本語、国語、英語など)の文脈でどう促すか
  • 高等学校の新カリキュラムで論理的思考がどう扱われているか、新科目「論理国語」のあり方  など

3.中国語母語学習者の日本語習得の研究とその応用

  • 中国語母語学習者のための新しい初級教授法の開発(「語彙学習先行モジュール」)
  • 中国語母語学習者のための早く読める専門読解教材・教授法の開発
  • 実験やテストによる日本語漢字熟語の認知処理
  • 漢語系接辞の使用による派生語の生成
  • 漢字語の音韻の学習
  • 日中バイリンガル年少者の漢字語学習
  • 学習・教授方法への応用-「語彙学習先行モジュール」の利用による教材開発   など

4.言語教育プログラムの諸問題の研究とその応用

  • 学習環境整備(授業の周辺の「たまり場」など)
  • 教師の協働
  • 学習者の自律を促す学習プログラムの開発
  • カリキュラム開発
  • 言語教育プログラム評価
  • 教育実践の研究の方法論と教材開発(最近は、「問い」や「複数テキストの利用」によって批判的思考や創造的思考を高めるような言語教育に関心を持っています。高等学校の「論理国語」にも関心があります。比較や分析といった高次の思考における帰納的推論と演繹的推論の組み合わせ、それを促すような言語教育方法など。)  など

5.日本の国際化、多言語・多文化化にともなう諸問題

  • 言語マイノリティの言語学習
  • 言語政策
  • 年少者バイリンガルの教育方法
  • 好意的支援者(ボランティア)による言語学習支援方法開発
  • コミュニケーションの緩衝地帯としての「たまり場」   など

 

【自己紹介】

 名古屋生まれ、名古屋育ちです。(子どものころから阪神ファンですが。)早稲田大学教育学部で国語国文学を専攻していましたが、4年生の時に2年間、中国に留学していました。その後、大学院では日本語教育を学び、博士後期課程を1年で中退して、桜美林大学で専任教員として14年半、働いていました。大学院に入ったころは日本語と中国語の対照研究に興味を持っていましたが、第二言語習得を勉強していくうちに、ただ対照研究をするだけでは、教育の現場では直接には役立たないと思うようになりました。当時は学位にこだわりもなく、博士課程中退で運よく就職もできました。現場で悪戦苦闘するうちに研究は進まなくなりましたが、現場で汗をかいて苦労したことが、のちに研究にもその他の仕事にも役立ったと思います。

 転機は2000年に訪れました。1年間のサバティカルをもらうことができ、北京とシドニーで半年ずつ研修生活を送ることができました。特にシドニーでは研究をしている博士の院生を見て、とてもうらやましいと思いました。その後もシドニーを訪れる機会があり、ついに2005年に大学を辞めて再度留学する決意をしました。仕事をしながら、オンラインなども使って博士課程に行くという選択肢もありましたが、仕事をしながらでは研究は進まないと思い、思い切って辞めて留学して博士号を目指すことにしました。2008年秋、家族を日本に残して、ニュージーランドのウェリントンに留学しました。毎晩、Skypeでコールするという生活でしたが、研究生活そのものはとても充実していました。Victoria University of Wellington には語彙の学習や教育に関心を持った先生方や院生がたくさんおり、再就職のプレッシャーはありましたが、それを除けば、大変充実した、楽しい日々でした。長く続く一本道を見ると、いつも、博士号取得までの道のりのように見え、自分が今どの辺にいるのかと、幾度となく考えました。2012年3月に博士論文を提出して帰国し、2013年2月に博士号 (Ph.D) を取得できました。

 博士論文を提出した4日後の2012年4月から東京大学教養学部で再び日本語教育の仕事を始めました。PEAK (Programs in English at Komaba) という英語で学位を取るプログラムを立ち上げる仕事でした。ここで日本語教育プログラムを作る仕事をするときには、桜美林大学での経験が大変役に立ちました。東京大学と桜美林大学では、とてもタイプの異なる大学のように思いますが、留学生や日本語教育に伴う問題は、驚くほど共通していました。これらの問題が構造的な問題であることを認識しました。その後、短期交換留学のプログラムなども担当してきました。その後、2022年4月に国立国語研究所に移籍しましたが、いまでも大学で非常勤講師として日本語を教える仕事も続けています。これからも現場に還元できるような研究と発信を続けていきたいと思います。


経歴

  16

論文

  29

MISC

  86

書籍等出版物

  10

講演・口頭発表等

  84

Works(作品等)

  37

共同研究・競争的資金等の研究課題

  24