MISC

2002年

カイコの発育に伴うキチナーゼ様遺伝子BmChi-hの発現変動

日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集
  • 大門 高明
  • ,
  • 浜田 晃太郎
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  • 鈴木 雅京
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  • 小林 正彦
  • ,
  • 嶋田 透

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開始ページ
129
終了ページ
129
出版者・発行元
社団法人 日本蚕糸学会

BmChi-hは、カイコのESTから発見された遺伝子で、キチナーゼ様のタンパク質をコードしている。BmChi-hがコードするタンパク質は、セラチア菌などの細菌と高い相同性があるが、鱗翅目以外の真核生物には相同な配列が知られていない。これらはBmChi-hが細菌から鱗翅目昆虫に水平移動した可能性を示している。キチナーゼは通常昆虫においては脱皮に必要な酵素であり、脱皮期特異的かつ組織特異的な発現が知られている。このような特異的発現を示さないキチナーゼは、昆虫にとっておそらく致命的である。私たちは、BmChi-hは細菌型のキチナーゼをコードしているにもかかわらず、カイコにおいては他の昆虫のキチナーゼと同様に、脱皮期に特異的に発現するのではないか、との仮説を立て、BmChi-hmRNAの発現の組織特異性ならびに経時変化を調査した。すなわち、4齢起蚕から蛹化まで24時間ごとに脂肪体·中腸·真皮の各組織から全RNAを調製し、BmChi-hcDNAをプローブとしてノーザンブロッティングでBmChi-hmRNAの発現を解析した。その結果、脂肪体では全発育段階を通じてmRNAがほとんど検出されなかったのに対し、中腸と真皮においては、4眠期および吐糸期に約2.4kbのmRNAが検出され、mRNA量が極大に達する日時は、中腸と真皮でほぼ一致していた。mRNAの増減はかなり急激であり、たとえば吐糸期の真皮においては、吐糸開始後2日目にはわずかしかないmRNAが3日目に突然多量に現れ極大となったのち、4日目には2日目と同じくらいの少量まで激減した。おそらくBmChi-hの転写および分解は、血中エクジステロイド濃度の増減に呼応していると考えられる。以上より、BmChi-hは細菌から水平移動してきた遺伝子である可能性があるにもかかわらず、カイコでは脱皮期に限定して、しかもキチンを分泌している組織に限って発現すること、すなわち合理的な調節を受けていることが明らかになった。

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CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130006987007
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  • CiNii Articles ID : 130006987007
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