共同研究・競争的資金等の研究課題

2021年4月 - 2024年3月

北極混合相層状雲の維持機構の解明―水平風鉛直シアの役割

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)
  • 端野 典平, Gijs de Boer, Gregory J. Tripoli

課題番号
21K03665
体系的課題番号
JP21K03665
配分額
(総額)
3,900,000円
(直接経費)
3,000,000円
(間接経費)
900,000円

初年度は、アラスカ北部の観測所およびMOSAiC観測実験のデータベースから単層の混合相層積雲を抽出することを予定していた。しかし労力と共同研究の状態を勘案し、2年目に行うこととした。その代わり、すでに実験設定が終わっているISDACの事例について、雲と乱流の時間発展について調査した。
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6時間のみの再現実験について、雲レーダー観測量であるレーダー反射因子について比較した結果、氷粒子の大きさは定量的に再現できていることがわかった。しかし平均ドップラー速度と速度スペクトル幅の再現に問題があることがわかった。後者2つの変数は乱流の発達に伴う雲内部の混合と関係がある。6時間の再現実験では乱流が十分に発達していない可能性があるため、15時間の再現実験を行い時間発展を調査した。その結果、6時間までとそれ以降では乱流の様子が定性的に異なり、6時間までは雲頂付近にて乱流強度が強いが、それ以降は雲底付近にて強くなることが解析された。雲底付近の乱流強度の増加とともに、雲底で水蒸気の収束が起こり、雲内に水蒸気が流入することがわかった。これは先行研究のエアロゾルの再利用と同じ空気の流れを表しており、雲の持続には、雲底下で水粒子の蒸発に由来する水蒸気の輸送が大切であることが示唆される。
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この結果に鑑み、まず水粒子のみ存在する状態で15時間だけLES実験を行い、雲底にて混合層が形成されるのを確認した。その後、氷粒子の形成を許す実験を行った。その結果、反射因子は過小評価ぎみであるが、平均ドップラー速度については改善が見られた。これは下降流が強く再現された結果である。これらは先行研究とも一致する結果であるが、速度スペクトル幅については観測と定性的な違いが存在し、雲頂におけるスペクトル幅が過小評価されていることがわかった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21K03665
ID情報
  • 課題番号 : 21K03665
  • 体系的課題番号 : JP21K03665