全球ヨウ素輸送モデルを用いた日本におけるヨウ素-129沈着の季節変動解析
2018 Joint 14th Quadrennial iCACGP Symposium and 15th IGAC Science Conference 2018 (iCACGP-IGAC 2018)
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- 開催年月日
- 2018年9月
- 記述言語
- 英語
- 会議種別
- 国・地域
- 日本
ヨウ素129($^{129}$I)は、水の年代測定や海底堆積物の追跡、ヨウ素循環の研究に有用な同位体である。大気中の$^{129}$Iの主なソースは、海洋からの揮発と核燃料再処理工場からの排出である。放出された$^{129}$Iは大気中を全球的に輸送され、地球表面に沈着するが、そのグローバルな循環は依然として十分に理解されていない。本研究では、$^{129}$Iの沈着過程に着目し、我々が開発した全球大気ヨウ素輸送モデルGEARN-FDMを用いて、青森県六ヶ所村で観測された$^{129}$I沈着量の季節変化の要因を調べた。シミュレーション期間を2006-2010年とし、気象モデルWRFと客観解析データERA-interimで計算した気象場を用いて$^{129}$Iの大気拡散シミュレーションを実施した。GEARN-FDMは観測された$^{129}$Iの沈着量の季節変化を良好に再現した。夏季の六ヶ所の月間沈着量の85-90\%は、海洋から揮発した無機態$^{129}$Iガスの湿性沈着によって生じた。一方で、冬季の六ヶ所の月間沈着量は、ヨーロッパの核燃料再処理工場から排出された無機態$^{129}$Iガスの湿性沈着が主な原因であった。ソースの季節的な違いは、北半球の中高緯度の西風による大気輸送に起因していた。さらに、ヨーロッパの核燃料再処理工場由来の$^{129}$Iの輸送経路として推定されたユーラシア北部においては、冬の$^{129}$Iの湿性沈着量が夏よりも少なかった。この結果は、ユーラシア北部の降水が六ヶ所の$^{129}$I沈着量の季節変動に影響していることを示唆している。