本研究では、無銭飲食などの脱抑制的行動が常同的にみられていた前頭側頭型認知症(FTD)患者の入院後の活動パターンについてICタグモニタリングシステムを用いて、連続してモニタリングした。その際に入院直後から一定の活動リズムが形成されたことがわかった。さらに入院による生活環境の変化がFTD患者の時刻表的な生活の活動リズムに変化を及ぼさなかった例として本症例を紹介する。症例は69歳女性。MMSE得点17/30。無銭飲食などが常同的にみられており、制止すると興奮するため入院となった。入院1週間の歩行時間は6時から24時以外にはほとんどなく、入院直後から歩行時間帯はほぼ一定であり、入院前の活動リズムとほとんど一致していた。本症例では、入院後に活動内容が変化しても、入院前の活動リズム自体は維持されたようであった。入院前の生活を把握し、それに合わせた病棟生活の構築を支援することの重要性が示唆された。(著者抄録)