共同研究・競争的資金等の研究課題

1991年 - 1993年

イスラム世界における都市空間構成に関する比較研究-庭園とモスクを中心にして-

文部科学省  科学研究費補助金(国際学術研究)  国際学術研究

課題番号
03041019
体系的課題番号
JP03041019
担当区分
連携研究者
配分額
(総額)
16,000,000円
(直接経費)
16,000,000円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

今年度の計画は、前年度までの調査実績を基に、メンバー各自の各々の専門のフィールドでの補充調査と、チュニジアでの総まとめの共同調査を組み合わせるというものだった。横山、藤井、林、小倉の4名は、この計画に従って行動したが、外交上の理由によって、羽田はイランでの調査を行うことができなかった。最後にイランでの補足調査が出来なかったことはまことに残念である。しかし、隊員全員が揃ったチュニジアでの調査は、短期間ではあったが、最終年度にふさわしく充実したものだった。チュニジアでの調査地は、チュニス、カイラワーン、スファックス、ス-ス、マフディーヤ、モナスティールであった。現地滞在中の私市正年氏(上智大学アジア文化研究所)が全面的に調査に協力して下さり、より多くの成果を挙げることが出来た。共同調査の主要な成果を、以下で箇条書きで述べる。1.チュニジア主要都市の都市プランの把握。とりわけ、主な宗教建築物(モスク、マドラサ、墓廟など)の都市内での位置と分布については、実際に現地を訪れ、確認した上で地図に書き込む作業を行った。その結果、文献上で知られていた位置と実際の位置が異なっていたものをいくつか発見した。また、モスクなどの公共建築の場合には、入り口の位置が重要だが、これも実地に確認することが出来た。2.チュニス旧市街のス-クを集中的に歩き、その業種別配置、店舗の賃貸関係、経営者の出自などについて聞き取り調査を行った。その結果は、目下分析中である。3.チュニス旧市街(メディナ)の住宅を訪問し、その構造と生活様式を具体的に把握することが出来た。伝統的な建築様式を踏襲しながらも、現代の生活に不自由のないように、巧みな改造が行われている。4.従来必ずしも明らかとなっていないチュニスのザイトゥーナ・モスク、カイラワーンの大モスクの建造・修復過程を現場で建築史的に検討し、その変容の状況を具体的に知ることが出来た。また、北アフリカに特徴的なミナレットの様式の発展過程も、スファックスのモスクを調査することによって、明らかに出来た。5.チュニジアには大規模な庭園の遺構は残されておらず、都市生活との関わりにおいて庭園が果たした役割は、イランなどの東方イスラム世界と比較すると、さほど大きくないことが確認された。6.現地の研究者との意見交換のため、カイラワーンのイスラム研究センター、チュニス近郊、ザグワンのアラブ地中海研究所を訪問した。また、これらの研究機関に所蔵されている貴重な蔵書の調査を行った。7.一般に北アフリカ(マグリブ)三国として、まとめて理解されるモロッコ、アルジェリア、チュニジアではあるが、一昨年のモロッコと今回のチュニジアでの調査を通じて、この三国をまとめて考察することの危険性が隊員の間で指摘された。モスクなどの宗教建築の建築様式を例にとると、とりわけ、モロッコとチュニジアの違いは際だっている。切妻で緑色の瓦を多用するモロッコに対して、チュニジアでは、平屋根で瓦を用いないものが多い。たまたま、19世紀以後フランスの植民地となったという共通の歴史を持つために、この三国は一つのグループとして理解されてきたが、今後は、もう少しきめの細かい調査、研究が必要であることが確認された。3年間(予備調査も入れると4年間)の調査を通じて、地域的にも、学問領域的にも異なったフィールドを研究対象とする研究者が、共同で調査することの面白さと難しさを常に実感してきた。基本的には、お互いが感じたこと、理解したことを現場で、また一日の調査が終了した後の夜自由に述べあって議論を深め、帰国後の文献調査によって事実を確定するという方式で、調査研究を進めたが、思いこみや基礎知識の欠如による誤解や疑問が相互に指摘されることがしばしばあった。調査の場は、自分の専門領域にだけ閉じこもっていたら、決して気づかなかった着想、また専門外だからかえって思いつくような根本的な疑問などを相互に検討しあうよい機会となった。今回の調査で得られた資料の整理が一段落し、その分析にも目途がついたなら、宗教施設(モスク、マドラサ、墓廟など)と都市の関係に焦点を絞った新たな調査研究班を結成し、第二次調査を行いたいと考えている。

リンク情報
URL
https://kaken.nii.ac.jp/d/p/03041019.ja.html
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-03041019
ID情報
  • 課題番号 : 03041019
  • 体系的課題番号 : JP03041019