2004年
スギ人工林の成立に伴う土壌無機態窒素動態の変化
日本生態学会大会講演要旨集
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- 巻
- 51
- 号
- 0
- 開始ページ
- 151
- 終了ページ
- 151
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.14848/esj.ESJ51.0.151.0
- 出版者・発行元
- 日本生態学会
森林生態系における窒素循環は、土壌-植物系での内部循環と降雨や渓流水による外部循環が存在し、森林成立の初期には外部循環系に依存しているのに対し、成熟した森林では内部循環が卓越するといわれている。本調査地は、集水域を単位として伐期約90年の輪伐経営が行われているスギの一斉人工林で、1-89年生のスギ林が隣接して存在しており、内部循環を経た渓流水中のNO3-濃度が、皆伐・植栽後上昇し、森林の成立に伴って減少することが明らかになった。そこで本研究ではこの調査地を用いて、林齢と植物?土壌系の無機態窒素動態の関係を明らかにすることにより森林成立に伴う窒素循環機構を明らかにすることを目的とした。<br>4、14、29、89年生の集水域内で0-10、10-30、30-50cmの各層位で土壌を採取し、2MKClで抽出後、オートアナライザによって土壌中のNH4+、NO3-現存量を測定した。また現地培養法、イオン交換樹脂法を用いて土壌中での無機態窒素の生成量・垂直移動量を求め、植物に利用可能な無機態窒素量を推定した。<br>植物に利用可能な無機態窒素は4、14、29、89年生でそれぞれ33.5、36.8、23.2、37.4kgN/ha/yrであり、29年生で低かった。一方、植物体の総窒素蓄積は0.03, 0.15, 0.39, 0.48tN/haで、30-40年で頭打ちになった。皆伐・植栽後は、利用可能な無機態窒素に対して植物体による吸収量が少ないため、渓流水へ流出するNO3-濃度は高いが、森林の成立に伴って吸収量が増加し、土壌中の利用可能な無機態窒素が減少して、渓流水のNO3-濃度が減少したものと考えられる。また89年生では可給態窒素量が多く、吸収量が頭打ちとなっている状態で渓流水への窒素の流出が少ないのは、窒素無機化に占める硝化の割合が若齢林よりも少なく、土壌にNH4+として蓄積されるからと考えられる。
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- DOI : 10.14848/esj.ESJ51.0.151.0
- CiNii Articles ID : 130007010989