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Peer-reviewed Lead author
Jun, 2018

都市部居住の若年者の過去1年間の自殺念慮経験と心理社会的特徴の関連 性差に着目した分析


Volume
65
Number
6
First page
24
Last page
31
Language
Japanese
Publishing type
Publisher
(一財)厚生労働統計協会

目的 都市部に居住する若年者の過去1年間の自殺念慮経験と心理社会的特徴の関連を明らかにし、今後地域において自殺予防対策を推進する上での示唆を得ることを目的とした。方法 調査会社にWeb調査を委託し、6つの政令指定都市に居住する18〜39歳のモニター登録者1,714人から調査協力を得た。調査項目は、デモグラフィック要因、過去1年間の自殺念慮経験の有無、援助に対する認知傾向、味方になってくれる人や機関、日常生活上の悩み、過去の体験、一般的信頼感、うつ・不安の程度(K6)、心理的対処であった。分析は、男女別に、過去1年間の自殺念慮の有無と心理社会的特徴の関連について、調査項目の頻度または平均値の比較をそれぞれχ2検定あるいはt検定を用いて行った。また、男女間での関連要因の違いを検討するため、男女別にロジスティック回帰分析を行った。結果 多重ロジスティック回帰分析によって調整済みオッズ比を算出した結果、男女ともに自殺の相談を受けた経験があること、うつ・不安の程度の高さ、および肯定的未来志向得点の低さが過去1年間の自殺念慮経験と有意に関連していた。これに加え男性では、身体の悩みの小ささ、不登校経験があることが、過去1年間の自殺念慮経験と有意に関連していた。また、女性では、自分の味方になってくれる中学以前からの友人がいないこと、家族とのコミュニケーションや恋人とのつき合いにおける悩みの大きさ、友人とのつき合いにおける悩みの小ささおよび有意味感得点の低さが過去1年間の自殺念慮経験と有意に関連していた。結論 過去1年間の自殺念慮経験の関連要因の特徴としては、特に、女性では過去の体験に加え、家族とのコミュニケーションや恋人とのつき合いに関する悩みとの関連がみられるなど、日常の悩みの程度との間に関連がみられた。男女とも過去1年間の自殺念慮経験あり群の方が肯定的未来志向の程度が低く、うつ・不安の程度が高い傾向がみられたことから、都市部の若年者の自殺予防対策においては、肯定的未来志向の低さやうつや不安の程度の高さを自殺関連行動のセカンダリアウトカムとして設定し、多様な支援方法を検討してくことが必要と考えられる。特に、家族や友人以外に相談できる窓口の普及啓発を進めることや、自殺リスクの高い若年者に対してより早期にアウトリーチ活動を実施していくことで、必要な支援につなげ自殺予防を推進していく必要がある。(著者抄録)

ID information
  • ISSN : 0452-6104
  • Ichushi Web ID : S702050004

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